老後資金対策で資産運用をするならiDeCOで
老後資金対策のために資産運用を検討したいという方は少なくないのではないでしょうか。その場合にはiDeCOを利用することが有利となっています。
■iDeCoは掛金の所得控除のメリットあり
iDeCOを推奨する理由はシンプルに税制上で圧倒的に優遇されているからです。iDeCoは年間で投資できる枠に制限はあるものの、運用益が非課税、iDeCoについては掛金を所得控除できる(節税になる)という優遇措置が取られています。
他の一般的な投資対象については有価証券であっても、現物不動産であっても総合課税で累進課税されるか、分離課税で最低でも20.315%が課税されます(一般NISA口座であれば運用益は非課税、但し年間投資可能な上限枠あり)。
■iDeCoで運用をしなければいけない訳ではない
iDeCoは掛金の所得控除で節税出来るメリットがありますので、iDeCo資金で運用をせず元本確保商品である定期預金等に資金を置いておくだけでも充分な効果がありますので、必ず運用をしなければいけないという訳ではありません。
老後資金の準備のため、ある程度資産運用をするなら一番有利な制度なので、最初に利用しましょうというのが本稿の趣旨です。また、資産運用をする際には「結果は保障されていない」「損をする場合もある」と言う点は必ず受け入れる必要があります。
■iDeCoとつみたてNISAの違い
iDeCoとつみたてNISAの主な差異は以下となります。
iDeCoには掛金の所得控除という大きなメリットがありますが、資金の引き出しは60歳まで原則出来ず、つみたてNISAは所得控除のメリットがない代わりに資金の引き出しが自由になっています。
老後資金対策であれば、掛金の所得控除メリットが取れるiDeCoをファーストチョイスとなります。
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つみたてNISA |
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対象年齢 |
20歳以上65歳未満* |
20歳以上 |
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最大期間 |
65歳まで* |
20年 |
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年間非課税枠 |
会社員:14.4万~27.6万円 |
40万円 |
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節税メリット |
運用益は非課税 |
運用益は非課税 |
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投資対象 |
預金・保険・投資信託 |
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口座管理費用 (開設費用) |
あり |
なし |
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出金 |
原則60歳まで不可 |
自由 |
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商品の入れ替え |
随時可能 |
不可 |
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払戻時の税制 |
退職所得控除・公的年金等控除 |
最大800万円の非課税投資枠 |
*国民年金に加入していることが要件、60歳以降国民年金に任意加入もしくは厚生年金への加入要
■iDeCoの注意点
メリットの多いiDeCoですが、開始したら原則60歳までは資金の引き出しは不可であることには注意が必要です。掛金を支払う場合には月5,000円が下限です。
掛金拠出は停止することも出来ます。但し、掛金を拠出しないと最大のメリットである所得控除が受けられなくなり、手数料(年間最低でも数千円)が掛かってくるため、残高が手数料分目減りするのみとなり、制度利用のメリットが薄くなります。
■iDeCoの運用管理機関の選び方
iDeCOを開始するには、運用管理機関である金融機関での口座開設が必要です。運用管理機関を選ぶ際には各種手数料、商品ラインアップを意識する必要があります。
- 手数料
まず、手数料についてですが、一時費用と月ごとに発生する費用があります。
加入時、もしくは企業型確定拠出年金からの資金移管時には一時費用の手数料が発生します。
支払先 |
手数料(税込) |
国民年金連合会 |
2,829円 |
また、毎月発生する費用としては以下があります。
加入者の場合(掛金を拠出している場合)
支払先 |
手数料(税込) |
国民年金連合会 |
105円 |
運用管理手数料 |
運用管理機関によって異なる |
信託銀行 |
66円 |
合計 |
171円~ |
運用指図者の場合(掛金を拠出していない場合)
支払先 |
手数料(税込) |
運用管理手数料 |
運用管理機関によって異なる |
信託銀行 |
66円 |
合計 |
66円~ |
初期の一時費用は一律2,829円で差異はありません。毎月発生する費用については、最低額は掛金拠出をしている場合には171円が、していない場合が66円が最低水準となります。各種手数料の面からは、月々の費用が最低水準の運用管理機関を選ぶべき、という結論になります。
- 商品ラインアップ及び商品のコスト(信託報酬)
また、商品ラインアップ及び商品の信託報酬水準も重要な要素となります。月間費用が最低水準の運用管理機関でも大手金融機関系の商品ラインアップは自社グループに偏っている場合が殆どで、且つ信託報酬(投資信託のコスト)水準がやや高めになっている場合もあります。
先進国株式のパッシブ(インデックス)商品の信託報酬を見て頂くと分かりやすいのですが、業界最安値の水準は0.10%程度になっています。先進国株式のパッシブ型商品の信託報酬が0.2%以上であったりする場合には他の商品も概ね高めの水準の信託報酬が設定されていると考えて良いでしょう。
■大手のネット証券であれば原則問題なし
手数料、商品ラインアップ、商品の信託報酬(手数料)水準の全てにおいて、大手のネット証券であれば、現状過不足ない状態となっています。
毎月かかるコストについては少額の差異に見えるかも知れませんが、原則長期に渡って運用を実施する制度ですので、毎月積立を実施するとして171円/月の際と、430円/月の際では30年間利用した場合には、93,240円の手数料差異が出る計算になります。また、信託報酬も長期運用においては小さな差異が最終リターンに少なくない差異をもたらすことになります。
■iDeCoの掛金は年1回払いも可能(元本確保商品のみにお金を置くのであればこちらが有利)
尚、iDeCoの掛金支払いですが、上限の範囲内で毎月等金額である必要はなく、年1回一括払いも可能です。年1回支払いの形ですと、171円かかる月が1か月で済みますので、手数料としては一番安上がりな方法となります。
但し、投資対象が定期預金等の元本確保商品でなく、株式等の価格が変動する商品に積立を実施している場合にはタイミング分散効果は限定的となります。定期預金等の元本確保商品のみに当面投資を実施する予定であれば、年一括払いを選択することで手数料が抑制出来ます。
■投資対象の選定(前提編)
iDeCoで何を投資対象とすべきかですが、前提として「複利」「コスト」「価格変動の大きさ」の3点についてご説明します。
利息を元本に組み入れ、(利息を組み入れた)元本に対して利息が計算される方法です。100円に対して3円の利息(利回り3%)で10年間投資した際の元本に利息を組み入れない場合(単利)と組み入れる場合(複利)の投資効果の差異は以下となります。
(円) |
開始時点 |
1年後 |
2年後 |
3年後 |
4年後 |
5年後 |
6年後 |
7年後 |
8年後 |
9年後 |
10年後 |
単利 |
100 |
103 |
106 |
109 |
112 |
115 |
118 |
121 |
124 |
127 |
130 |
100 |
103 |
106.09 |
109.27 |
112.55 |
115.93 |
119.41 |
122.99 |
126.68 |
130.48 |
134.39 |
年間利息3%で10年間投資した際の(元本部分に変化なしの前提)単利と複利のリターンの差異は4.39%でしたが、これを利回り4%、20年間とすると当初100の元本は20年後に単利で180、複利で219.11となり、リターン差異は39.11%まで広がります。
非常に大事な点ですが、「利回りが高ければ高いほど」、及び「投資期間が長ければ長い程」最終リターンが高くなり、単利と複利の差異は大きくなることになります。
- コスト
複利の、「利回りが高いほど」、及び「投資期間が長い程」最終リターンが高くなる特徴から、年間利回りに影響を及ぼす「コスト」は低い程最終リターンは高くなり、期間が長いほどその影響は大きくなります。
iDecoにおける商品のコストは主に「信託報酬」になります。
年率リターン3%、投資期間20年の場合に、年間コストが0.2%の場合と0.4%の場合の最終リターンの差異は以下となります。
信託報酬(コスト)年率0.2%の場合→最終リターン73.7%
信託報酬(コスト)年率0.4%の場合→最終リターン67.1%
コストが「複利」の年間リターンを低下させるため、投資期間が長い程、コストの最終リターンに及ぼすマイナス影響は大きくなります。上記のケースの場合、期間を30年の伸ばすと以下となります。
信託報酬(コスト)年率0.2%の場合→最終リターン129.0%
信託報酬(コスト)年率0.4%の場合→最終リターン116.0%
iDeCoの投資対象を議論する際に、誰しも信託報酬の議論をするのは、上記の通り信託報酬を意識することで確実にリターンを改善する効果があるからです。
- 価格変動の大きさ
投資対象の価格がどの程度変動するかも重要な観点です。ファイナンスの用語では「リスク」と言いますが、一般的には株は債券より値動きが大きく(価格が上昇する際も下落する際も幅が大きい)なります。
価格変動の大きい資産(株より債券)の方がリターンが高くなる傾向があります。株やREITの価格変動の大きいリスク性資産は債券に比べて高いリターンが期待できる一方、価格が下落する際の下落幅も大きくなります。
■投資対象の選定(実践編)-投資対象は海外株式インデックスが基本
iDeCoの投資対象についてですが、以下の観点から海外株式インデックス商品(為替ヘッジなし)を主な対象とすることをお勧めします。
- インデックス商品はコストが安い
まず、インデックス商品をお勧めする理由はシンプルにコストが安いからです。アクティブ運用(インデックスを上回る運用成績を目指す商品)はインデックス商品に比較してコスト高になります。当然コストを賄う以上の運用パフォーマンスが出せれば良いのですが、一般的にはアクティブ運用商品の8割はインデックスに劣後するパフォーマンスに留まると言われています。
- アクティブ運用商品がインデックスを上回るパフォーマンスをするかは予測不能
また、残念ながらどのアクティブ運用商品が今後インデックスを上回るパフォーマンスを出すかを予測することは出来ません。確実にリターン改善要因となるコストの低いインデックス商品に投資することが最も現実的な方法となります。
- 外貨投資は円安の際の購買力低下をヘッジ
海外資産に為替ヘッジなしで投資すると言うことは、投資時点で日本円を投資対象国通貨(USDの場合が多いです)に変換し、円安になれば、資産が増加、円高になれば資産が減少することを意味します。
大事な点はiDeCoを利用している方の多くが、収入の大半は日本円で長期で入ってくる点です。長期に円高であれば、外国製品の購買力という点では有利に働きます。一方、円安の場合には日本円の価値が低下し実質的な購買力の低下が懸念されます。この日本円の価値の低下のヘッジ手段として、外貨建て資産に投資することの意義は大きいと言えます。
- 株式投資はインフレへのヘッジ(他にも推奨理由あり)
株式への投資をお勧めするのは、①インフレ対策になるから、②足元の債券の期待リターンが低下しているから、③価格変動の大きい資産を非課税口座で所有することが合理的だから になります。
・インフレ対策
老後資金対策においてインフレは大きな敵です。保有している現金の価値が下がっていくことをヘッジするにはインフレに弱い債券や現金ではなく、株式に投資することに意義があります
・国債の期待リターン低下
世界各国で金利水準が低下し、国債10年金利でも日本や欧州でゼロ近辺もしくはマイナス金利となっている現状では、特に国内外の国債に投資することによる期待リターンは極めて低くなってしまっています。
この状況下で敢えて、信託報酬を支払って、債券に投資する意味は薄いと考えます。
・運用益非課税口座では価格変動の大きい資産に投資することが合理的
運用益非課税のメリットを最大限生かすためにも、価変動性の大きい株式非課税口座の中で持つことが合理的です。期待リターンの低い商品を運用益非課税口座で投資しても非課税のメリットは小さくしか享受出来ません。
■海外株式インデックスの中で何を選ぶかはお好みで
海外株式インデックス商品の投資対象は主に①米国株式(SP500指数等)②世界株式(MSCI ACWI指数等)③世界株式除く日本(MSCI KOKUSAI指数等)になります。
足元では米国株式のパフォーマンスが良好でしたが、今後どの指数がパフォーマンスが良いかは事前には予測できませんので、どれを選ばれても問題はないと考えています。
■国内株式インデックスや海外リートインデックスも有効な選択肢
国内株式のインデックスや海外リートのインデックスも有効な選択肢となります。投資対象として推奨する理由は海外株式と同様です。
国内株式については、外貨投資ではありませんので円安の際の購買力低下をヘッジという形にはならないのが海外株式インデックスとの差異になります。過去10年程度のトレンドでは円安の際には国内株式は上昇し、円高の際には下落しているので海外株式と類似の投資効果が得られているため、特に国内株式インデックスを投資対象としても問題はないと考えてます
海外リートインデックスについては海外株式インデックスとの差異は最終的な投資対象が不動産となるか、上場企業となるかになります。海外リートは「賃料」という予測しやすい収入が期待できる一方、信託報酬は海外リートインデックスに比較して高めという差異があります。全て海外リートに投資というのは極端かも知れませんが、投資して問題ない対象と考えています。
■投資手法① 「積立投資」は全ての局面で有効ではなく、必要に応じてブレーキを
- iDeCoでは「積立投資」が基本
iDeCoにおいては制度上、証券会社の通常の口座のように市場動向を見て、機動的に売買することが可能にはなっておらず、定期的に商品を積み立てていくことが原則的な投資手法となっています。
- 積立投資は「買い」の価格及びタイミングを分散する方法
積立投資は投資商品の購入のタイミングを分散する方法であり、定額の積立投資であれば、「価格が高い際には少ない口数、低い際には多い口数を購入」(いわゆるドルコスト平均法)することにより、「購入タイミング、価格の分散」という意味では、一定の効果が期待できます。
- 積立投資だから安全という訳ではない
一方「積立投資だから安全」という訳ではありません。投資対象の値上がりが持続する市場環境で積立を実施しても購入平均単価は上昇する一方です。逆に値下がりが持続する市場環境であれば、平均単価が徐々に下がってゆくので積立投資には有効な局面となります。
- 必要に応じて元本確保商品へのスイッチ、積立額の減額を
iDeCoでは元本確保商品へ資金を置くことが出来ますので、必要に応じて期待リターンは高いものの、価格下落リスクも大きい海外株式インデックスへ投資額を減額し、既存リスク性商品の元本確保商品への資金移動を行うことが最終リターンの向上には必要となってきます。
・海外株式インデックスの上昇余地が大きいと考える場合
→既存の資金+新規積立資金を全て海外株式インデックスに投資
・海外株式インデックスの上昇余地が少ないと考える場合
→既存資金の元本確保商品への一部スイッチ、新規積立資金の投資減額
・海外株式インデックスの上昇余地がないと考える場合
→既存投資を全て元本確保商品に振り替え、新規積立の停止
再度、海外株式インデックスに上昇余地があると考えた際には徐々に既存資金、新規積立共に投資比率を上げて行けばよい形になります。
- 上記の方法は難しいと考える方はバランス型ファンドへの投資を検討
何も考えずにひたすら定額の積立をしていれば良いという考えもありますが、価格変動の大きい海外株式でこれを実施することは下落リスクが大きいので、上記の方法を提案させて頂いて要ります。
一方、どのタイミングで海外株式インデックスの投資額を増減させていいか分からない、とにかく手間をかけたくないと、という方は後述のバランス型ファンドの積立を検討ください。
■投資手法② 投資は出口も意識を
・投資では「出口=売却」も重要
投資である限り、何時かは現金化をする必要があります。iDeCoでは投資期間が長期に渡りますが、今から意識する必要があるのは投資期限(原則60歳)が近くなってきたらタイミングを見て現金化を進めることです。
・運用終了時期の5年前位からは利益確定の意識を
運用状況にもよりますので一概にこのタイミングで利益確定を実施すべしというのは言えませんが、①運用終了の時期から5年前くらいからは利益確定を意識することが必要となります。具体的には元本確保商品である定期預金へのスイッチングの実施になります。
・利益確定は「買い」同様タイミング分散を
利益確定の際もタイミングの分散を意識する必要があります。購入の時と逆で、投資対象の値上がりが持続する際にはタイミングの分散は有効な利益確定手法となりますが、逆に値下がりが持続する際には全く機能しません。タイミング分散を意識しつつも、資産金額が目標に近い状態であれば、粛々と現金化をして行くことも重要になります。
■投資対象はバランス型ファンドも選択肢
上記で紹介している「海外株式インデックス商品に基本投資し、必要に応じて投資額や積立額を増減させる、というやり方は難しい、とりあえずほったらかしにしたいという方は「バランス型ファンド」への投資が選択肢となります。
- 「バランス型ファンド」とは?
国内外の株式・債券にに幅広く分散投資を行うファンドです。商品によって投資対象は異なりますが、国内株式、国内債券、海外株式(先進国)、海外債券(先進国)、海外株式(新興国)、海外債券(新興国)、国内リート、海外リートの8資産のいずれかを投資対象にするものが多いです。
- 「バランス型ファンド」のメリットは?
国際分散投資を商品が実施してくれること、複数資産に分散投資するため単一資産に投資するよりも価格変動が一般的には抑えられること、リバランス(資産配分比率の調整)が自動で行われること等があります。
- 「バランス型ファンド」の価格変動は?
商品によって異なりますが、組み入れ資産の価格変動についてはそれぞれ以下をイメージしてください。
・価格変動大 国内株式、海外株式(先進国)、海外株式(新興国)、国内リート、海外リート
・価格変動中 海外債券(新興国)
・価格変動中~小 海外債券
・価格変動小 国内債券
上記をベースにどの程度の価格変動が予想されるかを理解することが重要です。上記の8資産に均等配分するファンドは株式とリートで6割以上の比率であり、海外債券(新興国)も価格変動はそれなりにありますので、全体としては価格が変動しやすい商品となります。
- 「バランス型ファンド」の注意点は?
・価格変動がどの程度かは理解した上で投資を
前述の通り、バランス型ファンドに投資する際に重要なのは商品が結果としてどの程度のリスクを取っているか(価格の変動がどの程度潜在的に大きいか)を理解することです。リターンを積極的に取りにいくなら株式、リート比率の高いものを、損失を抑えることを重視するなら債券比率の高めの商品が選択肢になります。
・信託報酬にも留意
バランス型ファンドのコスト(信託報酬)は近年低下の傾向がみられるものの、株式・債券のインデックスの単純な50:50の配分で信託報酬が0.5%を超えるような商品も散見されます。0.2%を切る商品が望ましいですが、最低でも0.3%以下の信託報酬の商品を選ぶようにしましょう。
・信託報酬が安いが価格変動の大きい商品の投資比率を抑える、という方法も
国内株式、国内債券、海外株式(先進国)、海外債券(先進国)、海外株式(新興国)、海外債券(新興国)、国内リート、海外リートのの8資産に均等投資し、信託報酬は年率税込0.154%と低い水準にあるeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)という商品があります。
信託報酬水準はバランス型ファンドの中でも低く、長期投資には適した商品ですが、一方株式・リートへの配分は6割を超え、新興国債券にも投資するため価格変動が大きめになることが想定されます。価格変動を避けたい場合には、投資額のうち一定割合を定期預金に振り向けるという方法もあります。
・債券比率の高い商品は回避を
バランス型ファンドに投資する際に損失を抑えることを重視するなら債券比率の高めの商品が選択肢になると申し上げましたが、債券投資比率、特に国内債券投資比率の高い商品は現状ではお勧めできません。利回りが相当低くなっており敢えてコスト(信託報酬)を払ってまで投資するべき対象とは考えにくいからです。
・ターゲットイヤー型ファンドは回避を
「バランス型ファンド」の一種として特定の将来の年、例えば2030年をターゲットとして残り年数が長い期間には株式投資比率を高くし、残り年数が短くなってくると債券の投資比率を高くするといった「ターゲットイヤー型ファンド」と言われるものがあります。
ターゲットの年に向けて徐々に価格変動を抑えて行くという発想は悪くありませんが、資産配分が事前に確定しているため相場の変動に対応できない(株式比率が高い時期に株式市場が下落し、債券比率が高い時期に金利が上昇することも考えられる)ことと、コスト(信託報酬)が高い商品も多いため敢えて投資する商品ではないと申し上げておきます。
■企業型確定拠出年金に加入している場合
・企業型確定拠出年金(企業型DC)を稼働させない理由はない
資産運用を開始するのであれば、まずはiDeCoからと書きましたが、より正確に言うと勤務先で企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入しているのであれば、企業型DCの資金も稼働させない理由はありません。
企業型DCについては、加入されている場合でも、何かしらの形で説明を受けたことはあるものの、実際には運用はしておらず、結果定期預金等に資金が滞留しているケースが多いのではないでしょうか。
- iDeCoとの差異
iDeCoとの差異は掛金が勤務先の企業の拠出となっている点です。運用益が非課税である点、受取の際の税金についてはiDeCoとの差異はありません。加入者である社員は掛金を支払ってませんので、掛金の所得控除のメリットはありません。また、企業型DCの商品ラインアップはiDeCoと類似していますが、商品の信託報酬(手数料)に関しては全般的にiDeCoよりやや高めの印象です。
企業年金連合会の調査「確定拠出年金実態調査結果 2018年度調査」によると、加入者掛金の月額の平均は7,806円だそうですので、年間10万円弱の掛金が平均的ということになります。
運用益非課税、受取の際の税制もiDeCoとは違いはありませんので、iDeCo同様海外株式インデックスが投資対象の第一候補となります。常に全額で海外株式に投資する必要がないことは、iDeCoの場合と同様です。
■管理人はどうしてるの?
iDeCoの口座はマネックス証券で開設しています。加えて、勤務先が企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入しています。2つ併せて月2万円程度の掛金です。
今の市場の情勢で国内外の株式や債券への投資でリターンを期待できる状況ではないとの判断からiDecoも企業型確定拠出年金(企業型DC)も運用は一切せず定期預金に資金を置いています。
老後資金対策編
「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」をテーマとして、固定削減、節税、ポイント還元活用の実施方法を具体的に紹介して参りました。
一方、「老後」のお金に関する不安に関しては、年金不信もあり不安を持たないことはなかなか難しいと思います。老後資金対策の具体的な方法について書いてゆきたいと思います。
大前提① 国民年金は必ず支払う
会社員の方は厚生年金加入(給与天引き)になりますので、年金を払わないという選択肢はないですが、自営業等の方は「国民年金制度は払い損」「年金は将来貰えない」との論調が増えてきた結果、払いたくないと考える方も少なからずいらっしゃるかと思います。
しかしながら、国民年金を支払わないというのは(そもそも義務という話は一旦置いて)合理的でない、という点を以下に説明いたします。
■国民年金は生涯受給可能、国庫負担もありコストパフォーマンスに優れる
国民年金の老齢基礎年金は生涯受給出来る「長生き保険」の側面の強い制度です。民間保険会社の提供する保険商品もありますが、国民年金程のコストパフォーマンスには至ることは困難です。
理由はシンプルで、基礎年金の給付費の半分は国庫負担だからです。国庫負担分の半分が税金で賄われている以上、国民年金の受給権利を放棄することは自身が収められている税金による恩恵を放棄することに他なりません。
(参考)厚生年金でもコストパフォーマンスは良い
会社員向けの厚生年金であってもコストパフォーマンスが良いことは変わりません。老後は老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金を受給可能となりますが、厚生年金の保険料は労使折半で勤務先の会社が保険料の半分を負担しています。また、厚生年金の基礎年金拠出金の額の半分相当する額を国が負担しています。更に言うと、会社員に扶養されている配偶者は保険料負担がないというメリットもあります。
■老後の年金受給以外の保険機能がある
事故や病気によって身体の自由が効かなくなった場合には障害基礎年金が支給されます。民間の保険で対応する商品もありますが、国民年金程のカバーはされていません。また、家族を残して亡くなられた場合、残された家族に遺族基礎年金が子供が18歳になるまで支給されます。
■インフレ耐性がある
将来の経済環境がどうなるかは予測は困難ですが、仮にインフレとなった場合に物価の上昇が起こった際に現金の価値は低下します。国民年金は物価や賃金の変動に合わせて年金額が調整されますので、インフレ抵抗力を持っています。民間の保険では物価が上がっても受給額の変化がないものが多いです。
■制度自体が崩壊する可能性は低い
国民年金の制度自体は崩壊を防ぐ手立てがなされています。
「現役世代の保険料負担に上限を設定する一方、年金積立金を最大限利用しながら、現役世代が負担できる範囲内に年金給付を調整」する形の制度運営になっています。
■マクロ経済スライド制度による給付額抑制の仕組み
この観点から導入されたのが「マクロ経済スライド制度」です。年金受給者が受け取る年金額は賃金や物価の変動によって毎年改定されますが、その改定率を調整し、給付額の増加を抑える仕組みです。
本来、年金は物価や賃金の上昇率に合わせて給付額が増えます。しかしながら、少子高齢化に伴い保険料の払い手(現役世代)と受給者(老年世代)の人数のアンバランスが生じていることからマクロ経済スライドが導入されました。
現役世代の減少や平均寿命の伸びを考慮して、年金給付額の上昇を物価や賃金の上昇率以下に抑える仕組みとなっています。
■年金積立金の運用も活用される
現役世代の保険料負担には上限がある中で、年金積立金(170兆円弱あります)を最大限活用しながら、マクロ経済スライド制度により制度が持続可能な範囲内に給付を抑える仕組みとなっていますので、将来は現在ほどの年金の受給額は期待しない方が現実的ですが、制度自体は相応に堅牢に作られています。
■ベストではないがベターな制度である国民年金の保険料は払うことが賢明
国民年金は実際に利用可能な制度の中では最も効率的な制度と言えますので、保険料を払わずに貯金をした方が良い、運用をした方がよいなどといったことはせずしっかり保険料を納めることが賢明です。
大前提② 「2000万円問題」を理解しよう
もう1つの大前提として、「老後2000万円問題」について正確に理解することが必要となります。
「老後を生活するには2000万円ないと無理」「これから2000万円貯金しないと」といった解釈に傾いていた印象がありますが、そもそも金融庁の報告書に記載されていることは何か、それに対して取れる対策は何かという整理をします。
■金融庁報告書の内容
金融庁報告書で「2000万円問題」について述べられている事実は以下になります。
①平均寿命について(3-4P)
2017年の日本人の平均寿命は男性で81.1歳、女性で87.3歳、1950年頃の男性58.0歳、女性61.5歳に比較して大幅に伸びている。
「健康寿命」についても、2016年で男性約72歳、女性75歳と推計され、9-12年は就労困難な期間が平均的に存在すると推計される。
②平均的収入・支出について(8-10P)
高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の平均では月当たりの収入は209,198円、支出は263,718円、毎月5万円程度の赤字(正確には54,520円)が発生している。一方、平均純貯蓄額は2,484万円
③退職金給付について(13-14P)
定年退職者の退職給付額は平均で1,700万円~2,000万円程度
②の毎月5.5万円程度の赤字が30年続いた時の不足額が2,000万円弱になる(5.5万*12カ月*30年=1980万円)との話が2000万円問題の裏の計算になります。
大事なのは高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の平均純貯蓄額は2,484万円と記載されている点です。
■「月間5.5万円の赤字」は貯蓄額から許される範囲の赤字を出していると考えるのが妥当
「高齢夫婦無職世帯は平均的に年金給付額以上の支出を5.5万円程度しており、30年この状況が続くと総計2,000万円程度かかるが、純貯蓄額も平均で2,484万円ある」
「よって、この貯蓄から不足額を賄っている(貯蓄がなくならない程度の支出に留めている)」というのが金融庁報告書の理解としてはより正確ということがお分かり頂けたのではないでしょうか。
■報告書の提言も般的な内容
また、報告書の提言(21P)も以下のようなごく当たり前の内容を語っているに過ぎません。
「重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。」
「それを考え始めた時期が現役期であれば、後で述べる長期・積立・分散投資による資産形成の検討を、リタイヤ期前後であれば、自身の就労状況の見込みや保有している金融資産や退職金などを踏まえて後の資産管理をどう行っていくかなど、生涯に亘る計画的な長期の資産形成・管理の重要性を認識することが重要である。」
極めて、当たり前のことを語っているに過ぎません。
■「公的年金のみでは充実した老後生活を送ることは困難」であることを受け入れる必要
金融庁の報告書は「当たり前」のことを書いてあるに過ぎませんが、今後平均寿命の更なる伸長、年金受給額の現在に比べての減少は充分に起きうる事象です。
「2000万円」はあくまで現状の統計をベースにした平均の議論であり、個々人の事情により老後資金事情は異なりますが、「公的年金のみでは充実した老後生活を送ることは困難」という当たり前の事象は個々人で受け止める必要があります。
■具体的な対策
「公的年金のみでは充実した老後生活を送ることは困難」であることを受け入れた上で、老後(就労期間終了後)に向けて個々人が取れる対策は以下となります。
- 公的年金保険料支払い(大前提)
前述の通り、国民年金の保険料を支払うことは大前提条件となります。ベストの制度ではないかも知れませんが、「長生き保険」として他に国民年金以上に効率的な制度は見当たりません。
また、年金定期便(できればオンラインでID登録しましょう)で将来の給付予想を定期的に確認しましょう。公的年金の給付水準予想が老後の資金設計の礎となります。
- 固定費削減、節税、ポイント還元活用
特に大きく生活水準を落とさなくても、固定費削減、節税、ポイント還元活用を実施することにより、手元に残るお金を増やすことが出来る具体的方法は当Blogで説明して参りました。
・(繰り返しになりますが)まずは効果な確実な方法から実施を
稼ぐことや資産運用は不確実性が伴いますが、支出削減や節税は施策が確実に効果を生む分野です。老後資金を含めたお金に不安があるのであればまず最初に取り組むべき分野です。
・世帯当たり月2万円の可処分所得増加は可能
当Blogで紹介した、固定費削減、節税、ポイント還元活用等の手法を実行すると、1世帯あたり月2万円程度を削減することは現実的に可能と考えます。
特に2人以上の世帯であれば夫婦それぞれで携帯料金、生命保険・医療保険の保険料の見直しをするだけでも月2万円の可処分所得の増加は現実的な数値と考えます。
1人の世帯であっても携帯料金、生命保険・医療保険の保険料の見直しに加えて、他の固定費削減や節税、ポイント還元活用を実施することで月2万円の可処分所得の増加は決して無理な数字ではありません。
・月2万円の削減の効果
仮に月2万円の可処分所得の増加をそのまま貯金出来るとした場合、老後資金確保に向けて大きな効果を持ちます。
仮に現在40歳だったとして、65歳までの残り25年間、月2万円を貯金出来たとすれば2万円X12か月X25年間で600万円の資金が確保可能になります。
また、この2万円をiDeCOの掛金と出来るのであれば、年間所得が400万円であれば所得税、住民税併せて税率30%分の節税が60歳までは可能となりますので、2万円X12か月X20年X0.3で144万円の節税効果を追加的に得ることが出来ます。
2万円の可処分所得の増加が65歳以降も持続するとしたら(25年後の世界を予測するのは困難ですのでやや控えめに書かせて頂きますが)2万円X12か月X30年間=720万円の老後必要資金の減少となります。
この3つの効果が全て併せるとなんと1,464万円となり、計算される老後の不足額が一気に減少することがお分かり頂けると思います。
- 就業年数の延長
前述の通り老後資金の不足額の1300万円~2000万円という数値は「平均的に」1か月5.5万の不足が65歳以降20年間~30年間継続したという前提から導かれています。
65歳以降も就労すれば、上記計算のロジックに基づいても、月5.5万円の不足が起きる年数が減少し、公的年金の受給開始の繰り下げも併せて実施すれば年間の年金受給額は最大4割程度上昇しますので、老後の不足金額が減少する形の計算となります。
・就労年数の延長、年金の受給時期繰り下げの合算の効果は大
「2000万円問題」のロジックに基づくのであれば、70歳まで就労期間を延ばすことの効果のみで、老後資金として必要な額は95歳まで生きる前提で、月5.5万円 X 12か月 X 5年で330万円減少することになります。
また、65歳で年金受給開始をせず、70歳から受給に変更した場合、現状のルールでは年金額が4割増加します。夫婦で月額15万円の年金額とした場合、月6万円の年金額増加が期待出来ます。老後資金として必要な額は95歳まで生きる前提で、月6万円 X 12か月 X 5年で360万円減少することになります。
両方の効果を合わせて、690万円の必要額の減少となります。前述の月2万円の削減の効果と併せるとこれだけで、老後2000万円の不足が解消されてしまう計算となることがお分かり頂けると思います。
・就労期間を延長するのは、平均寿命が延びる中では当たり前のこと
長く働く、というのは老後資金問題の最大且つ最も現実的な解決方法になります。資金が足りないので働く、となると苦しいイメージがありますが、仮に寿命が100年、健康年齢も今より伸びることを予想するなら、人生の充実を考える上でも長く働くことが一番の老後資金対策と言えます。
■資産運用
老後資金不足の不安があり、「自助」を求められると資産運用をしなければいけない、という結論になりがちです。資産運用を老後資金の確保の手段として否定するものではありませんが、資産運用を実施する前に、前述の公的年金保険料支払い及び固定費削減、節税、ポイント還元活用による家計の合理化は必ず行いましょう。
上記で計算をしてみた通り、単純に金融庁の報告書のロジックに基づいて2,000万円問題への対処を検討するのであれば、家計の合理化、就労期間の延長でも充分対応が可能そうであることはご理解いただけたと思います。
それでも、老後資金の確保という観点で資産運用を実施する際にはiDeCo(イデコ)の制度を最優先となります。資金は原則60歳まで引き出せない制約はあるものの、掛金を課税所得から控除できるという圧倒的なメリットあり、運用益が出た際も非課税です。具体的な活用方法は項を改めてご説明します。
「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」 - ポイント還元編
■取り組む内容:高還元率クレジットカードへの支払い集中、その他キャッシュレス決済の活用
■1年間の費用削減期待額:世帯当たり数万円~(還元率、決済額による)
■取り組み優先度:★★★★★(★5つが最高)
■ポイント:Visa LINE Payカードの利用が足元ではお勧め
クレジットカードを中心としたキャッシュレス決済での支払いでは多くの場合、「ポイント還元」の恩恵を受けることが出来ます。高還元率のクレジットカードを保有し、可能な限り決済を集中させることは、家計の実質購買力を上げることが出来る貴重な手段となります。以下、メインカードの選び方、使い方を中心にキャッシュレス決済の活用方法について記載してゆきます。
■「高還元率」カードに決済を可能な限り集中
決済による還元額を増加させるには、「決済を可能な限りクレジットカード決済とするこ」と及び「高還元率のカードを保有すること」が重要になります。
クレジットカード以外のキャッシュレス決済でもポイント還元を受けることが出来ますが、足元軒並み還元率が落ちていますので、高還元率のクレジットカードに決済を集中するのが現実的と考えます。
■まずは日常の決済をクレジットカード払いに、必要に応じて家族カードの発行も
まずは、公共料金、オンラインショッピング、スーパー等日曜品購買、ランチ代等今まで現金で決済していたものがあれば、可能な限り全てクレジットカード払いに切り替えましょう。
無料で家族カードを発行できるケースも多いため、夫婦2人でそれぞれカードを持つ形にすれば、どちらかが1人で買い物にいった際でも家族カードを保有していればクレジットカード払いの機会を逃すこともありません。
■代表的な年会費無料の高還元率クレジットカード
「高還元率」のカードについては、1%以上通常ショッピングに対して、還元率があり年会費が無料のカードも用意されている代表的なクレジットカードは以下となります。
カード名 |
還元率 |
付与ポイント |
スマホ決済 |
||
Orico Card THE POINT |
1% |
オリコポイント |
iD |
||
1% |
dポイント |
iD |
|||
1% |
|||||
リクルートカード |
1.20% |
ー |
|||
REX CARD |
1.25% |
REXポイント |
ー |
||
*リクルートカード、REXカードについてゴールドカードはなし
■各カードのURLリンク
■どのカードが良いかは生活スタイル次第
上記のどのカードがメインカードとして向いているかは、ご自身の生活次第です。
還元率に差異はありますが、使わないポイントで還元を受けても意味がありませんので、利用されることの多いポイントで還元が受けられるカードを選択するのが一番です。
ポイントではなくキャッシュバックで還元を得たいのであればREXカードを選べば良いでしょう。
■非接触決済機能が付帯していれば利用可能範囲は拡大
また、Orico Card THE POINTとdカードにはNTTドコモが提供する非接触決済であるiDが付帯してます。(オリコカードには他にもQuicpayが付帯してます)。
iDやQuicpayのような非接触決済はカードを端末に近づけるだけで支払いが出来ますので、少額でもスムーズに決済に利用出来、広範な店舗で利用が可能です。
非接触決済の付帯しているカードを保有していればクレジット決済を使用する機会も増えますので、特にどのポイントで還元を受けたいという好みが強くないのであれば、非接触決済の付帯機能がついたカードをお勧めします。
■年会費有料のカードは年会費の採算性を考慮してから
ゴールドカードを筆頭とした年会費が必要なカードは、採算性を精査してから入会するようにしましょう。年会費無料でも、高還元率であったり、付帯保障が充実しているものもあります。
また、ポイント還元率の差異も決済額が相応に大きくなければ、年会費に見合わないケースも考えられます。例えば、Amazon Masterカードは通常カードとゴールドカードで以下の還元条件差異があります。
|
Amazon Mastercard クラシック |
Amazon Mastercard ゴールド |
年会費 |
1,375円(税込) *年1回の利用で翌年度無料 |
11,000円(税込) |
Amazonでの買い物 |
プライム会員2%還元 プライム会員以外1.5%還元 |
2.5%還元 |
Amazon以外での買い物 |
1%還元 |
1%還元 |
別途申し込み必要 |
自動的にサービス利用可 |
Prime会員である場合は(Prime会員単独の年会費は4,900円)実質的には6,100円の年会費差異で還元率の差は0.5%なので、6,100÷0.5%=122万円は決済しないと年会費の元はポイント還元では取れない計算となります。(Amazonのプライム会員であれば、9万円以上現金チャージをすれば2.5%のポイント還元があるので、敢えてクレジットカードで還元を狙う必要はないという側面もあります)
■年会費有料のカードのメリットは自身の生活スタイルに合うかどうか次第
又、以下のゴールドカードを筆頭とした年会費有料カードの一般的なメリットとして言われている点も、年会費を払ってまで得る必要のあるサービスかどうかは場合によりけりです。
- 利用限度額の大きさ
一時的な決済額増加(海外旅行等)はカード会社に連絡すれば限度額増枠は通常可能です。
海外旅行保険が充実しているという点も、そもそも海外旅行に行かないのであれば不要ですし、行く頻度が低い場合は別途海外旅行保険に入った方が合理的なケースがあります。
また、年会費無料のカードにも海外旅行保険が充実したものもあります。以下の2つのカードは年会費無料で自動付帯で海外旅行保険が付いてきます。
賠償責任 2000万円 傷害治療費用 200万円 障害死亡・後遺障害 2,000万円
賠償責任 2000万円 傷害治療費用 200万円 障害死亡・後遺障害 500万円
- 空港ラウンジの利用
また、空港ラウンジ利用可という点もメリットとなるかどうかも、ケースバイケースと考えます。航空機を利用する出張や旅行に行かないのであれば無くても問題ありませんし、カードで入れるラウンジは航空会社の上級会員用ラウンジと違って特段クオリティが高いわけではありませんので空港内の通常の飲食店に入れば事足りるという考えも出来ます。
■クレジットカード決済で航空会社マイルを貯めることの是非
クレジットカード決済で航空会社マイルを貯めることについては管理人は中立的な立場です。
旨く利用すれば、航空会社マイルは実質的にもかなりお得に飛行機に乗れる場合もありますが、一方人気路線はなかなか予約が取りづらく、必要なマイルも多くなりがちです。また、先の予定まで確実に決めることの出来る方でないとマイルによる予約はしづらいのが実態です。
この点を考慮すると、使えるかどうかわからないマイルで還元を受けるのではなく、現金同様にほぼ使えてしますポイントで還元を受ける方が合理的という考え方も出来ます。
飛行機に良く搭乗される、かなり先の旅程を決められる、アップグレード等でマイルを利用したい等の場合にはマイルで還元を受けることは有効な場合もありますので、ケースバイケースと言えます。
■Visa LINE Payカードは当面メインカードにする価値あり
2020年の4月から申し込みが開始された、Visa LINE Payカードですが、当面メインカードにする価値がある内容となっています。同カードの特徴は以下となります。
名称 |
Visa LINE Payクレジットカード |
年会費 |
1,250円(税別) *初年度年会費無料、2年目以降も年1回以上の利用で年会費は無料 |
ポイント還元 |
LINEポイント3%還元(還元上限なし) *2021年4月30日までの期間限定 *ポイント還元は一部の支払いを除く |
国際ブランド |
Visa |
発行会社 |
三井住友カード株式会社 |
- 還元率は2021年4月末まで3%を予定
当カードをタッチ決済(PayWave)、オンライン決済を含めて支払いに使用した場合、2021年4月末まで(予定)は3%のLINEポイントによる還元を受けられることになります。
Visaの実店舗及びオンラインの加盟店に加えて、実店舗のiDの加盟店でも使用が可能(Google Pay/Apple Pay経由)となっており、広範囲の決済で利用可能なカードと言えます。
実質年会費無料で、3%の還元率は初年度限定とは言え大変魅力的な水準且つ、特定の店舗やサービスを対象としない還元ですので当面決済を当カードに集中される価値は充分あると言えます。
電子マネー・プリペイドカードへのチャージ等ポイント還元の対象外となっている支払いがありますのでご注意ください。いわゆるポイントの二重取りは出来ません。
- LINEポイントの利用可能店舗
溜まったLINEポイントですが、LINE Payが利用できるお店で利用可能です。大手コンビニを筆頭に記載されている店舗だけでも多数ありますので、使用することに困ることはないでしょう。
- Line PayはVisa LINE Payカードなしでは利用価値がなくなった形
一方、Visa LINE Payカードの申し込み開始に合わせて、LINE Payの還元方針は変更され、Visa LINE Payカードを持たない場合にはポイント還元はなしという形に2020年5月から変更されました。Visa LINE Payカードを持たない場合には、還元目的でLINE Payを決済で使用する意味はほぼなくなったことになります。
新しいLINE Payの還元制度ですが、過去6か月間に獲得したポイントに従って4つのマイランクに区分され、1%~3%のポイント還元が受けられますが、LINE PayアカウントにVisa LINE Payカードを紐づけた「チャージ&ペイ」の支払いであることが還元の条件となっています。。
6か月に必要なポイント数 |
マイランク |
還元率 |
5,000 |
プラチナ** |
3% |
500 |
ゴールド |
2% |
100 |
シルバー |
1.5% |
0 |
レギュラー |
1% |
*チャージ&ペイ(Visa LINE Payカードとの紐づけ)使用時
- Visa LINE PayカードとLine Payが利用できる場合は前者を優先
注意点としては、Visa LINE Payカードでの支払い(Google Pay/Apple Pay経由のiD払い含む)であれば当面3%の還元が受けられるものの、LINE Payのコード支払いを利用した場合にはランクに応じたポイント還元率は1~3%の間となり、必ず3%とは限らない点です。
マイランクがプラチナになるまでは、Visa LINE Payカードでの支払い(Google Pay/Apple Pay経由のiD払い含む)が出来る際には、LINE Payが利用できてもカードで決済するようにした方が確実に3%の還元を受けられます。
■使用可能店舗の独自性からPaypayには依然利用価値あり
メインカードにiDやQuicpay等の非接触決済が付随していれば、通常のカード払いに加えて広範囲で実質クレジットカードで決済することは可能となります。
一方、個人経営商店を中心にそもそも現金決済以外は原則受付けない店舗も未だに少なからず存在します。
そんな店舗でもPaypayのみは利用可能というケースが多く見られます(店舗負担がないキャッシュレス決済としてPaypayが営業を推進した結果だと推察されます)。
2020年4月からの還元方針改正で、基本は0.5%還元となってしまったPaypayですが、Paypayしかキャッシュレス決済を受け付けない店舗では利用しない理由はありません。他のキャッシュレス決済との使用可能な店舗の違いからPaypayは現在でもインストールしておくべきアプリと考えます。
但し、2020年6月でキャッシュレス・消費者還元事業が終了してしまう影響もあり、加盟店のPaypay離れという話も出てきていますのでPaypayが今後も利用価値があるかどうかは今後の状況次第と言えます。
■管理人はどうしてるの?
Line Pay Visaを現在メインカードとしており、可能な決済はほぼ全てこちらのカードに集中させています。時限とは言え還元率3%の威力はなかなかで、Lineポイントがすぐに数千ポイントたまるイメージです。
OricoのクレジットカードでiDとQuicpayが付帯しているものも保有しており、以前は重宝していましたが、Line Pay Visaの利用開始と共に殆ど利用しなくなりました。
クレジットカード以外のキャッシュレス決済ではカード利用不可のお店でPaypayを利用することが多いです。Paypayの還元率は落ちてきているので利用価値は大分落ちてきたと感じます。
「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」 - 節税編④ ふるさと納税
■取り組む内容:ふるさと納税制度活用による返礼品の入手
■1年間の節税期待額:1人当たり数万円~(所得が増えれば増える程増加)
■取り組み優先度:★★★★★(★5つが最高)
■ポイント:税額に実質中立ながら返礼品を入手可能なふるさと納税の制度は使わない理由なし
■ふるさと納税とは?
納税者が自身が選択した地域の自治体への寄付を通じて税金の優遇が受けられる制度です。
納税者が自身が選んで地方自治体や市町村へのふるさと納税(寄付)を実施した額のうち、2,000円を超える額について一定の上限まで所得税と住民税から原則全額が控除される仕組みです。
iDeCoの掛金控除、生命保険料控除、医療費控除の場合には所定の金額が「課税される額」から控除されますが、ふるさと納税の場合には「税額」から控除される形になります。
■必要な手続きは?
ふるさと納税を実施した際に税金の控除を受けるためには「確定申告」か「ワンストップ特例制度」を通じて手続きが必要です。
- 「確定申告」
税務署への寄付金受領証明書の提出により所得税からの還付及び住民税からの控除
- 「ワンストップ特例制度」(1年で寄付先が5自治体未満の場合には利用可能)
寄付の都度、各自治体に申請書及び本人証明書の提出によって住民税からの控除
ふるさと納税を実施する対象自治体が少ない場合にはワンストップ特例制度の方が手間が少ないです。
■税額控除が可能な額は?
税額控除を受けられる金額は所得金額によって定められています。所得控除の適応状況等によっても変化しますので、正確には毎年の年末にならないと分かりません。
凡その額については下記の総務省のサイトで確認出来ます。
■給与所得者は源泉徴収票発行後、正確な上限が確認可能
給与所得者が正確なふるさと納税上限額を知ることが出来るのは、毎年12月に勤務先から源泉徴収票が発行される時点です。
源泉徴収票の数字を見ながら下記サイト等で上限額を計算可能です
■ふるさと納税は税額にはほぼ中立、一方返礼品のメリットが大きい
ふるさと納税は2,000円は納税者の持ち出しとなりますが、それ以外の金額については税額には中立の制度です。一方、各自治体が「返礼品」という形で寄付者にお礼の品を送付することが幅広く実施されており、この「返礼品」の受領が制度の実質上のメリットとなっています。
■返礼品の価値はガイドラインで「寄付額の3割以下」
「返礼品」については以前は高い還元率の商品を出している自治体もありましたが、2019年6月以降は「地場産品」「寄付額の3割以下」とのガイドラインになっています。
■金額メリットにすると年間どれくらい?
年収500万円(共働きもしくは独身)世帯を例とすると年間6,1000円の寄付が可能で、返礼品の還元率3割を前提とすると月1,500円程度の家計の費用削減への寄与が期待出来ます。
■ふるさと納税はどうやってやるの?
ふるさと納税は各種サイトを通じて寄付を行うのが一般的です。「ふるさと納税」でネットで検索するとふるさと納税を実施出来るサイトが出てきますので、好きなものを選べば良いでしょう。
サイトによって取り扱っている自治体に差異はありますが、機能としては類似しています。各種人気返礼品ランキング等知ることが出来ますし、手続きはシンプルです。また、クレジットカード決済に利用も広範に可能ですので、ポイントを貯めることも出来ます。
■ふるさと納税の注意点
- 寄付のし過ぎには注意
ふるさと納税の可能額上限は正確には自身の所得金額や控除金額が見えてくる年末までは分かりません。上限を超えた寄付については、ただの「割高な通販」になってしまいますので、寄付額の上限を超えないよう、特に年の前半には寄付をし過ぎないようにしましょう。
- 書類の保存は忘れずに
確定申告の際に必要な寄付金控除証明書等はきちんと保存するようにしましょう。
- 返礼品の選び方にも注意
・返礼品については還元率で選ぶもよし、好きな品物を選ぶもよしですが、比較的大量の食品が送られてくる場合も少なくありません。日持ちする腐らないものにした方が無難かと思います。
■管理人はどうしてるの?
特に比較検討をした訳ではないのですが下記のサイトを使用しています。
複数のサイトを利用しても良いのですが、上限の管理が面倒なので1つのサイトに絞って利用しています。必ずクレジットカード決済で利用するようにしています。
また、返礼品ですが以前は色々と試したのですが、最近は地味ですが飲料水を中心にオーダーしています。たまに、魚介類の生鮮品も受け取ったりします。以前、お米を1年分定期的に送付するという返礼品を試したのですが、どんどんお米が溜まって食べきるのが翌年までかかったいうこともあり、以後は米は注文していません。
「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」節税編③ 医療費控除
■取り組む内容:医療費控除・セルフメディケーション税制の漏れのない申請
■1年間の節税期待額:世帯当たり数万円~(医療費次第で増加)
■取り組み優先度:★★★☆☆(★5つが最高)
■ポイント:医療費控除・セルフメディケーション税制が使えるよう医療費は記録に残すこと
■医療費控除制度とは?
1月1日~12月31日までに支払った自身及び自身と生計を一とする配偶者やその他親族の為に払った医療費が一定額を超えた際に所得控除が可能な制度です。
一定の額とは通常であれば10万円、総所得金額が200万円未満の場合には総所得金額の5%の金額となります。控除の上限は200万円となります。
■医療費控除に必要な手続きは?
確定申告が必要ですが、手続きは比較的シンプルとなっており5年間は証拠として保存が必要であるものの、確定申告の際に領収書の提出は不要となっています。
代わりに明細書の提出が必要となりますが、国税庁のHPからExcelのフォームがダウンロード可能で、E-Taxによる確定申告であればこちらのフォームをそのまま読み込ませることが可能です。記載すべき内容もシンプルで慣れてしまえば、特に記入に問題がない手続きです。
医療費の中で何が医療費控除の対象になるかについては国税庁HPに公開されております。
■世帯の中で誰が申請するのが良い?
尚、「自身及び自身と生計を一とする配偶者やその他親族」の所得金額の多寡は医療費控除適応の要件とはされていませんので、医療費控除は生計を一とする家族内で一番税率の高い方に寄せるのが節税効果が高いと言えます。
■セルフメディケーション税制とは?
セルフメディケーション税制は医療費控除とは併用が出来ない制度です。病院にはあまり行かず、処方箋なしで買える市販薬を利用することの多い世帯の利用を想定している制度で年間12,000円以上の対象の市販薬を購入した場合に適応され、控除の上限は88,000円です。
■セルフメディケーション税制の対象者は?
「日頃から健康維持のための対策を取っている人」が対象ですが定期的に健康診断を受けている方はこの条件をクリアします。対象となっている薬は厚生労働省のHPでも確認できますし、購買する際にドラッグストア等で個々に確認することも出来ます。
■いずれの制度も費用の記録が重要
医療費控除・セルフメディケーション税制については申請漏れがないよう、日頃から医療費を(可能であればE-tax提出用のExcelで)記録しておくことが重要です。領収証等の保存も必要になります。
■管理人はどうしてるの?
幸いなことに、医療費控除制度を利用するほど医療費が掛からないことがほとんどですが、かかった医療費は必ずE-tax提出用のExcelに記録し、領収書等も保存するようにしてます。
「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」 - 節税編 ② 生命保険料控除
■取り組む内容:生命保険料控除の漏れのない申請、場合によっては節税目的の保険加入
■1年間の節税期待額:世帯当たり数万円程度
■取り組み優先度:★★★☆☆(★5つが最高)
■ポイント:年末調整、確定申告での申告は忘れずに 控除枠を有効活用できる保険商品も
■生命保険料控除 とは?
支払った保険料が一定の上限があるものの、所得控除可能な制度です。契約している保険の種別によって控除額の上限が決まっています。
■控除額上限は?
保険の種別ごとの控除可能額の上限は以下の通りです。
「新生命保険料」「新個人年金保険料」=40,000円
「旧生命保険料」「旧個人年金保険料」= 50,000円
「介護医療保険料」 =40,000円
*但し、合計適応限度額は120,000円
個人年金保険→個人年金保険の中で個人年金保険料税制適格特約が付加されたもの
■保険の種別はどうやって確認するの?
契約されている保険の種別や控除対象額については契約されている保険会社から毎年送付される「生命保険料控除証明書」で確認可能です。
■手続きは何が必要?
年末調整、もしくは確定申告で「生命保険料控除証明書」をエビデンスとして申請可能です。会社員の方であれば、年末調整の際に「生命保険料控除証明書」の提出を求められる筈です。
■配偶者の保険料も申請出来る?
所得控除の制度ですので、可能な限り家計を同一とする世帯内で税率の高い方に生命保険料控除を適応するのが得策です。
「新生命保険料」「旧生命保険料」「介護医療保険料」「新個人年金保険料」「新個人年金保険料」それぞれに控除適応額に上限がありますので、上限を意識しつつ世帯内で誰に控除を適応するかを検討する必要があります。
尚、生命保険保険量控除については配偶者が契約者となっている生命保険について保険料を支払った夫は生命保険料控除の対象になるとの見解が国税庁から出されており、必ずしも生命保険料控除の対象者が保険契約者である必要ではないと明言されています。
■地震保険料控除制度や小規模企業共済掛金控除制度も同様の制度
類似の制度として地震保険料控除制度や小規模企業共済掛金控除制度があります。
- 地震保険料控除制度
地震保険の保険料については、所得税が最高5万円、個人住民税が最高2万5千円を課税所得金額から控除可能です。
- 小規模企業共済掛金控除制度*
小規模企業共済掛金については全額控除可能です。
*小規模な個人事業主や法人の役員等が退職したり事業を廃止した際に、積立て来た掛金に応じた共済金の受取が可能な制度です。掛金は月額1,000円~70,000円となりますが、掛金に退職や廃業をした場合に受取が可能です。
■条件付きだが、節税するために生命保険に加入する方法も
生命保険料控除を得るために生命保険に加入する必要は全くないのですが、稀に生命保険というよりは定期預金の商品性に近い商品が販売されています。
例えば、明治安田生命のこちらの商品になります。5年間保険料を払い込んで、10年の満期時には払込額の3%増しで解約払戻金が返ってくること、満期の10年の前に解約しても積み立て額の100%
が返ってくる仕組みになってます。
このような商品であれば、他に生命保険料控除の枠を使用しておらず、月々の5,000円以上の資金の余裕があるのであれば、加入することで生命保険料控除分は節税が可能です。
2012年以降の生命保険契約は年間8万円までは控除の対象となり、8万円以上の支払いであれば4万円が所得控除の対象になります。(国税庁HPより)
この保険であれば、最低積立額月額は5,000円、次は10.000円となってます。月5,000円の積立であれば35,000円、月10,000円の積立であれば40,000円が所得控除可能になります。
課税される所得金額が330万円~695万円であれば、所得税+住民税で30%の税率になりますので、10,500円(5,000円積立)もしくは12,000円(10,000円積立)の年間節税が可能となります。節税効果という意味では控除の上限を超えない月5,000円の積立が効率が良いと言えます。
■管理人はどうしてるの?
生命保険、医療保険双方に加入しており毎年年末調整を通じて申請しています。枠の上限にそれなりに近い状態になっているので、控除枠を活用するために紹介したような生命保険に入るということはしておりません。
なお、気づかずに起きた事象なのですが以前加入していたがん保険は古い契約だったので「旧生命保険料」の枠だったのですが、新しく加入した都民共済の生命共済は「介護医療保険料」 となり「旧生命保険料」の枠はがん保険がなくても一杯であったため、結果生命保険料控除で控除できる額は以前より増加しました。
古い契約で「旧生命保険料」の枠が複数の保険で埋まっている場合には、医療保険を乗り換えることによりこのようなメリットが発生する場合があるということに気づいた次第です。
「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」 - 節税編① iDeCo
■取り組む内容:iDeCoへの加入の検討
■1年間の節税期待額:1人当たり数万円~数十万円(掛金、所得の額による)
■取り組み優先度:★★★★★(★5つが最高)
■ポイント:掛金の所得控除で節税可能なiDeCoへの加入は検討しない理由なし
節税編の一番最初に紹介する方法はiDeCo(イデコ)です。iDeCoは運用益非課税というメリットもありますが、何よりも掛金の所得控除で節税がです。
■iDeCOって何?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は確定拠出年金法に基づく私的年金の一種です。
掛金は国民年金の被保険者種別に応じて上限が決められており、掛金で定期預金、投資信託等の商品ラインアップから運用対象を自分で選び運用し、掛金と運用益(損)の合計額を原則60歳以降に年金または、一時金として受取可能な制度です。
■iDeCOの掛金ってどれくらい?
iDeCoの掛金は国民年金の被保険者種別に応じて以下のように定められています。
いずれの場合も月額5,000円が下限となります。
具体例 |
掛金拠出額月額上限 |
|
第1号保険者 |
自営業者等 |
6.8万円 |
第2号保険者 |
企業型DCなしの会社員 |
2.3万円 |
企業型DC加入の会社員 |
2.0万円 |
|
DB加入者、公務員 |
1.2万円 |
|
第3号保険者 |
専業主婦(夫)等 |
2.3万円 |
会社員の方は掛金の上限は勤務先に確認しましょう(加入不可の場合もあります)。
■iDeCoの節税効果
- 掛金が全額所得控除可能
iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となり、所得税、住民税の負担軽減に繋がります。Nisa、つみたてNisa、証券会社の一般口座にはない大きなメリットとなります。
- 年末調整もしくは確定申告で手続き実施
手続きについては加入している場合国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が手元に届きますので、同書類をエビデンスとして、年末調整もしくは確定申告での対応が可能です。
- 「運用」をしなくても加入の価値あり、節税のインパクトは大きい
課税される所得金額が330万~695万円の方であれば、所得税率は20%、住民税率は10%となりますので、月に2万円の掛金を支払った場合、そのうち6,000円は税金減という形で返ってくる形になります。
この場合、年間72,000円の節税効果がありますので、制度に20年加入すると、(給与額、税率に変化ないと仮定して)144万円の節税効果となりインパクトのある数字となります。
この節税効果がある限り、所得が定期的に今後も見込まれる方は、制度を利用して運用をしなくても(定期預金という形で元本確保商品が提供されています)iDeCoに加入する意義があります。
■他にはどういうメリットがあるの?
- 運用益が非課税
通常、投資信託の運用益や定期預金の利息には20.315%が課税されますが、iDeCoでは全て非課税になります。長期運用をする場合には課税の有無は最終的なリターンに大きな差異をもたらします。
- 転職、退職時に年金資産の持ち運びが可能
iDeCoから企業型確定拠出年金に、企業型確定拠出年金からiDeCo、iDeCoからiDeCoへの資産持ち運びが可能です(所定の手数料は掛かります、また運用商品自体をそのまま持ち運べる訳ではありません)
■iDeCoの注意点
- 加入年齢
iDeCoに加入できる年齢は65歳未満です(国民年金、厚生年金加入が条件)
- 原則60歳まで引出不可
資産は原則、60歳以降まで引き出せません。60歳時点で加入期間が10年以上の場合60歳時点で受取が可能になりますが、10年未満の場合には段階的に最大65歳まで引出可能な期間が遅くなります。受給開始の年齢の上限は75歳です。
- 手数料
iDeCo加入には取り扱う金融機関(運営管理機関)を1社選ぶ必要があります(1社しか選べません)が口座開設時(1回のみ)及び運用期間中(継続してかかる)に所定の手数料がかかります。
- 受取時の税金
受取時には制度上優遇はあるものの、課税される可能性があります。
・受取の方法及び適応税制
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受取方法 |
税制 |
一時金 |
一括 |
退職所得 |
年金 |
分割 |
雑所得 |
・一時金の場合
一時金は退職所得扱いになります。退職所得は以下の計算式で計算されます。
退職所得=(収入金額‐退職所得控除)×0.5
退職所得控除の金額は勤続年数(年数の端数は切り上げ)によって異なり、以下となっています。
勤続年数 |
退職所得控除額 |
20年以下 |
40万円×勤続年数(最低80万円) |
20年超 |
800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
iDeCoの場合には「勤続年数」=加入期間となります。実際には退職所得控除枠は一般的な退職金も合算して考慮されますので、より複雑な計算が必要となりますが、ここではiDeCoのみと仮定して計算を例示します。
加入期間15年の場合の退職所得控除額 → 40万円*20=800万円
加入期間25年の場合の退職所得控除額 → 800万+70万*(25-20)=1,150万円
退職所得は分離課税で他の所得と合算されず、控除後の金額の半分に課税されますので、課税される場合でも税制上は有利な制度となっています。
加入期間25年で、収入金額が1,500万円あった場合でも、退職所得は1,500万円から退職所得控除の1,150万円を引いた350万円の半分の175万円が課税対象の金額になり税額が大きくなることはない仕組みです。
・年金の場合
年金は雑所得扱いとなり、「公的年金等の雑所得=収入金額-公的年金等控除額」が課税される所得となります。計算方法については以下となります。
下記表に基づいて、公的年金等に係る雑所得の金額=(a)×(b)-(c)
公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下 |
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年金を受け取る人の年齢 |
(a)公的年金等の収入金額の合計額 |
(b)割合 |
(c)控除額 |
65歳未満 |
公的年金等の収入金額の合計額が600,000円までの場合は所得金額はゼロ |
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700,001円から1,299,999円まで |
100% |
600,000円 |
|
1,300,000円から4,099,999円まで |
75% |
275,000円 |
|
4,100,000円から7,699,999円まで |
85% |
685,000円 |
|
7,700,000円から9,999,999円まで |
95% |
1,455,000円 |
|
10,000,000円以上 |
100% |
1,955,000円 |
|
65歳以上 |
公的年金等の収入金額の合計額が1,100,000円までの場合は、所得金額はゼロ |
||
700,001円から1,299,999円まで |
100% |
1,100,000円 |
|
1,300,000円から4,099,999円まで |
75% |
275,000円 |
|
4,100,000円から7,699,999円まで |
85% |
685,000円 |
|
7,700,000円から9,999,999円まで |
95% |
1,455,000円 |
|
10,000,000円以上 |
100% |
1,955,000円 |
https://www.resona-tb.co.jp/401k/begin/how-to-receive.html
65歳以上の場合、公的年金等(国民年金、厚生年金など)の収入金額の合計が110万円までは非課税ですが110万円を超えた部分については、課税対象となります。
現状の税制をベースとすると、例えば65歳以上の人で「公的年金等の収入金額の合計額」が350万円の場合に、公的年金等に係る雑所得の金額=課税対象金額は以下になります。
3,500,000円×75%-275,000円=2,350,000円
・健康保険料への影響にも注意
注意点は健康保険料です。雑所得が所得に合算されますので、iDeCo資金の年金方式の受取により、国民健康保険等に加入されている場合には料率が上昇する可能性があります。
・一時金と年金の併用も可能
運用管理機関によっては「一時金」と「年金」を併用する形で受け取ることも可能です。勤務先からの退職金とiDeCoの受取金の合算値が退職所得控除の額を超えてしまう場合、退職所得控除の範囲内で収まる額を一時金、残りを年金として受け取ることで税率を最低限に抑えることが出来ます。
・受取の際は課税される可能性があることを忘れずに
多くの方にとってはiDeCo資金の受取は大分先の話となり、税制の変更の可能性も考えられます。現状では、「一時金」か「年金」の受取方法があり(併用可)いずれの方法も控除等で税制上優遇されているものの、課税される可能性があり、受取方法は税制を踏まえて検討する必要があるという点を忘れないようにしてください。
- 特別法人税
確定給付企業年金、確定拠出年金は、積立金の全額に一律1.173%の特別法人税が課税されることが原則となっていますが1999年4月から課税が凍結されています。最近では2020年3月末が延長期限でしたが、2023年3月末までの課税凍結の延長が決まってます。20年以上凍結されている特別法人税ですが、廃止が決まった訳ではありません。
■iDeCoとNISA、つみたてNISAの比較
運用益について非課税であることには差異はありませんが、掛金が所得控除可能で節税効果を持つことがiDeCoの最大のメリットになります。
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つみたてNISA |
一般NISA |
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運用期間 |
加入から原則65歳まで |
20年間 |
5年間 |
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運用商品 |
定期預金、保険、投資信託 |
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投資限度額 |
国民年金の被保険者種別による |
年間40万円 |
年間120万円 |
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換金 |
60歳まで原則不可 |
制限なし |
制限なし |
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税金 |
掛金は所得控除 一括の場合退職所得控除、 |
運用益は非課税 |
運用益は非課税 |
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■管理人はどうしてるの?
「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」 - 節税編
固定費削減が定期的に発生する費用を減らすことで、可処分所得の増加に繋がるのに対して、節税は収入に対して掛かる税金の額を減らすことによって、可処分所得の増加をもたらす方法です。
■日本の税制の基本的な仕組み
節税について理解するために、日本の税制の仕組みの基本について説明します。
- 所得税は「総合課税」と「分離課税」
総合課税:1年間に納税者が得た所得を合計して課税対象とする方法
分離課税:他の所得の合計しないで、独自の税率を使用して税額を決める方法
「総合課税」と「分離課税」は以下の所得について適応されます。
総合課税 |
分離課税 |
給与所得 事業所得 不動産所得 一時所得 雑所得 譲渡所得(土地建物、株式等譲渡以外) 配当所得 利子所得 |
退職所得 山林所得 土地建物、株式等譲渡による譲渡所得 事業所得(一部) 一時所得(一部) 雑所得(一部) 配当所得 利子所得 |
給与所得や不動産所得(家賃等)は総合課税となり、退職所得(退職金等)や土地建物等を売却した場合の譲渡所得等は分離課税となっていることが分かります。両方に記載されている所得については総合課税の場合も、分離課税の場合もあるということです。
- 総合課税は累進課税で所得が増えれば増える程税率が上がる
「総合課税」は「累進課税」となっており、所得が増えれば増える程税率が上がる仕組みとなっています。所得額ごとの税額は以下の通りです。
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
195万円以下 |
5% |
0円 |
195万円~330万円以下 |
10% |
97,500円 |
330万円~695万円以下 |
20% |
427,500円 |
695万円~900万円以下 |
23% |
636,000円 |
900万円~1,800万円以下 |
33% |
1,536,000円 |
1,800万円~4,000万円以下 |
40% |
2,796,000円 |
4,000万円超 |
45% |
4,796,000円 |
税額の計算方法ですが、例えば、「課税される所得金額」が500万円の場合には、控除額の427,500円を引いた4,572,500円に対して、20%の914,500円が税額となります。
「課税される所得金額」は収入ではなく、収入から後述の「所得控除」を引いた額になります。年収や年商がそのまま「課税される所得金額」になる訳ではありません。
- 住民税は原則一律10%
住民税は「均等割」と「所得割」に分かれます。
均等割:全ての住民一律に、定額の税金を課す方法
所得割:住民の所得に応じて税金を課す方法 標準税率は10%*
*自治体によって異なる可能性あり
■「所得控除」の活用が節税のポイント
上記でご説明した日本の税制の特徴を踏まえて、節税に有効な方法は課税される「所得金額」を「所得控除」によって減らすこと、になります。
- 所得控除とは
一定の要件に該当する場合に、所得の合計金額から一定の金額を引くことが出来る制度です。所得税額は大まかには「(収入 - 経費 - 所得控除)× 税率)になりますので、所得控除が大きければ大きい程税額は低くなります。
特に会社員の方は経費の計上で課税される所得額を減らすことは困難ですので、所得控除を活用することが主な可能な節税策となります。
また、所得控除については、こちらのページに記載されているものが対象となります。
- 意識すべき所得控除は限られている
上記のページに記載されている所得控除の数は多いですが、大半のものは会社員の方であれば会社に申請している配偶者の収入や家族の扶養状況に応じて自動的に反映されているものが殆どで、自営業の方でも確定申告の際に申告することで反映されるものが殆どです。
主に意識すべき所得控除は以下となります。
・「社会保険料控除」
→iDeCoの制度を有効活用しているか
・「医療費控除」
→世帯でかかっている医療費を記録しているか、確定申告で漏れなく申告しているか
・「生命保険料控除」
→年末調整もしくは確定申告で漏れなく申告しているか、控除枠を有効に活用しているか
この3つの控除に加えて、所得控除ではないですが「ふるさと納税」の制度を有効活用することが一般的に可能な主な節税策になります。
■固定費削減は収入が増えても効果は一定、節税は収入が増えると効果が増大
例えばですが、1か月1万円の固定費削減した場合、年間所得が500万円でも1,000万円でも月1万円が削減されるという効果は変わりません。
一方節税の場合は、ご説明した通り総合課税対象の所得は累進課税=所得が上がるほど税率が上がる」ため、所得控除10万円の効果は年間所得500万円の場合は2万円なのに対して、年間所得1,000万円の場合は3.3万円となります。
総合課税対象の所得については、所得控除による節税は、所得が増える程効果が増大するため、所得が増えれば増える程、実施を検討するべきという話になります。
固定費削減具体編⑪ 車保有に関わる費用
■取り組む内容:車を持たない生活の検討
■1年間の費用削減期待額:世帯当たり数十万円~
■取り組み優先度:★☆☆☆☆(★5つが最高)
車は車両そのものの価格に加え、各種維持費等を考慮すると支出としては重くなる分野です。車がないと生活が成り立たない方も少なからずいらっしゃると思いますので、やや極論の万人向けのメッセージではないですが、車を持たない生活を一度検討の提案が今回の内容になります。
■車保有による費用って何があるの?
車の保有については車両代を除いても以下の費用が発生します。
- ガソリン代
車種、走行距離、ガソリン価格によって異なります
所有に対して年間で普通自動車は「自動車税」で30,000円から100,000万円程度、軽自動車の場合「軽自動車所有税」で10,800円です。
- 保険代
「自賠責保険(強制保険)」と任意保険に分かれます。前者は1年で10,000円強、後者は保障内容等により変化。任意保険も結果多くの方が加入。
- 車検代
法定費用と車検基本料に分けられ、それぞれ30,000円~50,000円程度。 2年に1回(新車時初回は3年に1回)受ける必要があります
- メンテナンス費用
消耗品の交換や車体のメンテナンスに費用がかかります。
- 駐車場代
全国平均で月8,000円程度だそうですが東京23区内では月数万円の場合もザラです
■車保有のコストは最低でも月数万円
駐車場代やガソリン代にもよりますが、維持運営費用だけでも、月数万円単位での出費は見込まれます。特に駐車場の高い地域で駐車場を借りた場合、維持費用は高額になります。軽く見積もっても月数万円、駐車場代が高かったり走行距離が長いと月10万円に近い額になることも充分にあり得ます。
車両代を含めると最低でも年間数十万の費用が掛かりますので、車の保有を仮にしないことが出来るのであれば、固定費の削減効果は計り知れません。20-30年単位では1,000万円を超える費用の差が発生する計算になります。
■車保有なしの生活を一度は検討を
生活環境上車がないと生活が簡単ではない場合もあるかと思いますので、車を持つべきではないとは申し上げません。
一方、若い方の一人暮らしであったり、お子様のいらっしゃらないご夫婦で都会に在住の場合には電車、バス、自転車、徒歩、必要に応じてレンタカー、カーシェアリング、タクシーの利用で車を持った場合ほど便利ではないものの、無くても充分に生活が可能である場合は少なくないのではないでしょうか。
車を使う必要が日常的にある場合でも、レンタカーやカーシャアリングの利用を検討する余地はあります。両者とも必ずしも自分が使いたいときに使える訳ではないこと等、利便性が落ちる点もありますが、車にかかる費用を変動費化する(固定費から外す)という意味で極めて合理的なオプションです。
■管理人はどうしてるの?
管理人は関東圏の都心部で長年生活してるため、人生で車を保有したことはありませんが、電車、バス、徒歩、自転車の利用で特に困ることなく快適に生活しています。特に近距離移動での自転車利用は大変重宝してます。
車の故障や破損、最悪のケースとして事故のトラブルに巻き込まれることもないですし、車に費用をかけていないことで、結果として家計の健全な運営に大きく貢献しています。自身が車の保有に関しては少数派であることは自覚しています。
固定費削減具体編⑩ 住宅ローン繰上返済
■取り組む内容:住宅ローンの繰り上げ返済購入を検討
■1年間の費用削減期待額:世帯当たり数万円~数十万円
(借り入れ規模、金利、繰り上げ返済額による)
■取り組み優先度:★★★★★(★5つが最高)
■ポイント:余裕資金は住宅ローンの繰上返済に充てることにより、金利負担を削減
住宅ローンを利用されていて、且つ余裕資金が手元にある場合には住宅ローンの繰り上げ返済をすることで利息の総額の抑制が可能です。
繰り上げ返済は効果が確実に期待できるため、住宅ローンを借りていて手元資金がある場合には効果が不確実な資産運用を検討する前に、繰り上げ返済を検討することが賢明です。
■住宅ローンの繰り上げ返済とは?
住宅ローンの返済期間中に、毎月の返済額とは別の形でローンの返済を実施することです。通常の返済とは別に実施することで、借入残高が減少する形になります。
通常の返済では「元金+利息」を返済する形になりますが、繰り上げ返済は支払った額がそのまま「元金」を減らすこととなり、利息が軽くなるという仕組みです。
■繰り上げ返済にはどういう方法があるの?
- 期間短縮型(返済額据え置き型)
返済期間を短くするやり方です。繰り上げ返済するお金を元本の返済に充て、返済額を据え置きとするので、返済期間が短くなります。ローン完済の時期が早くなります。
- 返済額軽減型(返済期間据え置き型)
通常の支払いの返済額を減らすやり方です。繰り上げ返済するお金を元本の返済に充て、返済期間を据え置きとするので、毎月の返済額が減少します。ローン完済の時期は変わりません。
■利息削減効果が大きいのはどういう場合?
住宅ローンは「元利均等返済」=毎月の返済額は変わらず、当初は利息の返済の割合が高く、徐々に元本支払いの割合が高くなる が一般的です。
従って、繰り上げ返済を実施するタイミングが早いほど利息軽減効果が高いです。返済期間が長く残っている場合、残債が多い場合、金利が高い場合は繰り上げ返済の効果が高くなります。
また、期間短縮型の方が返済額軽減型より利息削減効果が大きくなります。毎年、残債に対して金利がかかるため、返済期間を短くする効果が大きいということです。
■具体的にはどれくらい利息が減るの?
ローン残高:3,500万円
返済期間 :35年(元利均等返済、ボーナス返済なし)
以上の条件の場合、利息の総額は約650万円となります。
この条件で100万円をローン開始5年後に期間短縮型で繰り上げ返済すると利息返済額は約35万円減少します。10年後ですと28万円程度です。
返済減少額 / 繰り上げ返済額 = リターンと考えるならこれ以上のリターンを得られる金融商品はなかなか存在しないレベルです。
住宅ローンのシュミレーションはこちらのサイト等で可能です。
■繰り上げ返済を検討する際の注意点
- 余裕資金がないのであれば見送りも
繰り上げ返済はあくまで、余裕資金がある際に検討すべき事項です。手元資金の余裕がない場合にはまず家計の立て直しが優先です。
- 住宅ローン控除も考慮要
住宅ローンを借りている場合、年末残高の1%が軽減される住宅ローン控除ですが、繰り上げ返済をすると借り入れ残高が減りますので、軽減される税額が少なくなります。また、ローンの残存期間が10年未満となると制度が利用不可となります。返済によって住宅ローン控除のメリットが減ることを計算に入れて住宅ローン繰り上げ返済の効果を計算しましょう。
- 繰り上げ返済には手数料が必要な場合も
繰り上げ返済には手数料がかかる場合があります。1回につき数千円から数万円の水準が多いようです。インターネット銀行では無料の場合もあります。返済一回ごとに手数料はかかるのでまとめて繰り上げ返済をした方がコスト抑制となります。
■管理人はどうしてるの?
賃貸住宅住まいで、住宅ローンは借りていないので具体例は示せません。