「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」 

家計改善の「実践的」且つ「正攻法」の方法を紹介して行きます。

「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」 - 節税編① iDeCo

 

■取り組む内容:iDeCoへの加入の検討

■1年間の節税期待額:1人当たり数万円~数十万円(掛金、所得の額による)

■取り組み優先度:★★★★★(★5つが最高)

■ポイント:掛金の所得控除で節税可能なiDeCoへの加入は検討しない理由なし

 

節税編の一番最初に紹介する方法はiDeCo(イデコ)です。iDeCoは運用益非課税というメリットもありますが、何よりも掛金の所得控除で節税がです。

 

iDeCOって何?

iDeCo(個人型確定拠出年金)は確定拠出年金法に基づく私的年金の一種です。

 

掛金は国民年金の被保険者種別に応じて上限が決められており、掛金で定期預金、投資信託等の商品ラインアップから運用対象を自分で選び運用し、掛金と運用益(損)の合計額を原則60歳以降に年金または、一時金として受取可能な制度です。

 

iDeCOの掛金ってどれくらい?

iDeCoの掛金は国民年金の被保険者種別に応じて以下のように定められています。

いずれの場合も月額5,000円が下限となります。

国民年金

具体例

掛金拠出額月額上限

第1号保険者

自営業者等

6.8万円

第2号保険者

企業型DCなしの会社員

2.3万円

企業型DC加入の会社員

2.0万円

DB加入者、公務員

1.2万円

第3号保険者

専業主婦(夫)等

2.3万円

 

会社員の方は掛金の上限は勤務先に確認しましょう(加入不可の場合もあります)。

 

iDeCoの節税効果

  • 掛金が全額所得控除可能

iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となり、所得税、住民税の負担軽減に繋がります。Nisa、つみたてNisa、証券会社の一般口座にはない大きなメリットとなります。

 

  • 年末調整もしくは確定申告で手続き実施

手続きについては加入している場合国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が手元に届きますので、同書類をエビデンスとして、年末調整もしくは確定申告での対応が可能です。

 

  • 「運用」をしなくても加入の価値あり、節税のインパクトは大きい

課税される所得金額が330万~695万円の方であれば、所得税率は20%、住民税率は10%となりますので、月に2万円の掛金を支払った場合、そのうち6,000円は税金減という形で返ってくる形になります。

 

この場合、年間72,000円の節税効果がありますので、制度に20年加入すると、(給与額、税率に変化ないと仮定して)144万円の節税効果となりインパクトのある数字となります。

 

この節税効果がある限り、所得が定期的に今後も見込まれる方は、制度を利用して運用をしなくても(定期預金という形で元本確保商品が提供されています)iDeCoに加入する意義があります。

 

■他にはどういうメリットがあるの?

  • 運用益が非課税

通常、投資信託の運用益や定期預金の利息には20.315%が課税されますが、iDeCoでは全て非課税になります。長期運用をする場合には課税の有無は最終的なリターンに大きな差異をもたらします。

 

  • 転職、退職時に年金資産の持ち運びが可能

iDeCoから企業型確定拠出年金に、企業型確定拠出年金からiDeCoiDeCoからiDeCoへの資産持ち運びが可能です(所定の手数料は掛かります、また運用商品自体をそのまま持ち運べる訳ではありません)

 

iDeCoの注意点

  • 加入年齢

iDeCoに加入できる年齢は65歳未満です(国民年金、厚生年金加入が条件)

 

  • 原則60歳まで引出不可

資産は原則、60歳以降まで引き出せません。60歳時点で加入期間が10年以上の場合60歳時点で受取が可能になりますが、10年未満の場合には段階的に最大65歳まで引出可能な期間が遅くなります。受給開始の年齢の上限は75歳です。

 

  • 手数料

iDeCo加入には取り扱う金融機関(運営管理機関)を1社選ぶ必要があります(1社しか選べません)が口座開設時(1回のみ)及び運用期間中(継続してかかる)に所定の手数料がかかります。

 

  • 受取時の税金

受取時には制度上優遇はあるものの、課税される可能性があります。

 

・受取の方法及び適応税制

 

受取方法

税制

一時金

一括

退職所得

年金

分割

雑所得

 

・一時金の場合

一時金は退職所得扱いになります。退職所得は以下の計算式で計算されます。

 

退職所得=(収入金額‐退職所得控除)×0.5

 

退職所得控除の金額は勤続年数(年数の端数は切り上げ)によって異なり、以下となっています。

勤続年数

退職所得控除額

20年以下

40万円×勤続年数(最低80万円)

20年超

 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

 

iDeCoの場合には「勤続年数」=加入期間となります。実際には退職所得控除枠は一般的な退職金も合算して考慮されますので、より複雑な計算が必要となりますが、ここではiDeCoのみと仮定して計算を例示します。

 

加入期間15年の場合の退職所得控除額 → 40万円*20=800万円

加入期間25年の場合の退職所得控除額 → 800万+70万*(25-20)=1,150万円

 

退職所得は分離課税で他の所得と合算されず、控除後の金額の半分に課税されますので、課税される場合でも税制上は有利な制度となっています。

 

加入期間25年で、収入金額が1,500万円あった場合でも、退職所得は1,500万円から退職所得控除の1,150万円を引いた350万円の半分の175万円が課税対象の金額になり税額が大きくなることはない仕組みです。

 

・年金の場合

年金は雑所得扱いとなり、「公的年金等の雑所得=収入金額-公的年金等控除額」が課税される所得となります。計算方法については以下となります。

 

下記表に基づいて、公的年金等に係る雑所得の金額=(a)×(b)-(c)

公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下

年金を受け取る人の年齢

(a)公的年金等の収入金額の合計額

(b)割合

(c)控除額

65歳未満

公的年金等の収入金額の合計額が600,000円までの場合は所得金額はゼロ

700,001円から1,299,999円まで

100%

600,000円

1,300,000円から4,099,999円まで

75%

275,000円

4,100,000円から7,699,999円まで

85%

685,000円

7,700,000円から9,999,999円まで

95%

1,455,000円

10,000,000円以上

100%

1,955,000円

65歳以上

公的年金等の収入金額の合計額が1,100,000円までの場合は、所得金額はゼロ

700,001円から1,299,999円まで

100%

1,100,000円

1,300,000円から4,099,999円まで

75%

275,000円

4,100,000円から7,699,999円まで

85%

685,000円

7,700,000円から9,999,999円まで

95%

1,455,000円

10,000,000円以上

100%

1,955,000円

https://www.resona-tb.co.jp/401k/begin/how-to-receive.html

 

65歳以上の場合、公的年金等(国民年金、厚生年金など)の収入金額の合計が110万円までは非課税ですが110万円を超えた部分については、課税対象となります。

 

現状の税制をベースとすると、例えば65歳以上の人で「公的年金等の収入金額の合計額」が350万円の場合に、公的年金等に係る雑所得の金額=課税対象金額は以下になります。

 

3,500,000円×75%-275,000円=2,350,000円

 

・健康保険料への影響にも注意

注意点は健康保険料です。雑所得が所得に合算されますので、iDeCo資金の年金方式の受取により、国民健康保険等に加入されている場合には料率が上昇する可能性があります。

 

・一時金と年金の併用も可能

運用管理機関によっては「一時金」と「年金」を併用する形で受け取ることも可能です。勤務先からの退職金とiDeCoの受取金の合算値が退職所得控除の額を超えてしまう場合、退職所得控除の範囲内で収まる額を一時金、残りを年金として受け取ることで税率を最低限に抑えることが出来ます。

 

・受取の際は課税される可能性があることを忘れずに

多くの方にとってはiDeCo資金の受取は大分先の話となり、税制の変更の可能性も考えられます。現状では、「一時金」か「年金」の受取方法があり(併用可)いずれの方法も控除等で税制上優遇されているものの、課税される可能性があり、受取方法は税制を踏まえて検討する必要があるという点を忘れないようにしてください。

 

確定給付企業年金確定拠出年金は、積立金の全額に一律1.173%の特別法人税が課税されることが原則となっていますが1999年4月から課税が凍結されています。最近では2020年3月末が延長期限でしたが、2023年3月末までの課税凍結の延長が決まってます。20年以上凍結されている特別法人税ですが、廃止が決まった訳ではありません。

 

iDeCoとNISA、つみたてNISAの比較

運用益について非課税であることには差異はありませんが、掛金が所得控除可能で節税効果を持つことがiDeCoの最大のメリットになります。

 

iDeCo

つみたてNISA

一般NISA

 

運用期間

加入から原則65歳まで
(国民年金加入が要件)

20年間

5年間

 

運用商品

定期預金、保険、投資信託

承認された投資信託ETF

株式、投資信託ETFREIT

 

投資限度額

国民年金の被保険者種別による 
最大年額81.6万円

年間40万円

年間120万円

 

換金

60歳まで原則不可

制限なし

制限なし

 

税金

掛金は所得控除 
運用益は非課税 
受取は

一括の場合退職所得控除、
分割の場合は公的年金等控除

運用益は非課税

運用益は非課税

 
 
 

 

■管理人はどうしてるの?

勤務先の提供する年金制度の関係で月12,000円が掛金の上限となりますが、iDeCoマネックス証券で加入しています。