老後資金対策で資産運用をするならiDeCOで
老後資金対策のために資産運用を検討したいという方は少なくないのではないでしょうか。その場合にはiDeCOを利用することが有利となっています。
■iDeCoは掛金の所得控除のメリットあり
iDeCOを推奨する理由はシンプルに税制上で圧倒的に優遇されているからです。iDeCoは年間で投資できる枠に制限はあるものの、運用益が非課税、iDeCoについては掛金を所得控除できる(節税になる)という優遇措置が取られています。
他の一般的な投資対象については有価証券であっても、現物不動産であっても総合課税で累進課税されるか、分離課税で最低でも20.315%が課税されます(一般NISA口座であれば運用益は非課税、但し年間投資可能な上限枠あり)。
■iDeCoで運用をしなければいけない訳ではない
iDeCoは掛金の所得控除で節税出来るメリットがありますので、iDeCo資金で運用をせず元本確保商品である定期預金等に資金を置いておくだけでも充分な効果がありますので、必ず運用をしなければいけないという訳ではありません。
老後資金の準備のため、ある程度資産運用をするなら一番有利な制度なので、最初に利用しましょうというのが本稿の趣旨です。また、資産運用をする際には「結果は保障されていない」「損をする場合もある」と言う点は必ず受け入れる必要があります。
■iDeCoとつみたてNISAの違い
iDeCoとつみたてNISAの主な差異は以下となります。
iDeCoには掛金の所得控除という大きなメリットがありますが、資金の引き出しは60歳まで原則出来ず、つみたてNISAは所得控除のメリットがない代わりに資金の引き出しが自由になっています。
老後資金対策であれば、掛金の所得控除メリットが取れるiDeCoをファーストチョイスとなります。
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つみたてNISA |
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対象年齢 |
20歳以上65歳未満* |
20歳以上 |
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最大期間 |
65歳まで* |
20年 |
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年間非課税枠 |
会社員:14.4万~27.6万円 |
40万円 |
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節税メリット |
運用益は非課税 |
運用益は非課税 |
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投資対象 |
預金・保険・投資信託 |
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口座管理費用 (開設費用) |
あり |
なし |
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出金 |
原則60歳まで不可 |
自由 |
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商品の入れ替え |
随時可能 |
不可 |
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払戻時の税制 |
退職所得控除・公的年金等控除 |
最大800万円の非課税投資枠 |
*国民年金に加入していることが要件、60歳以降国民年金に任意加入もしくは厚生年金への加入要
■iDeCoの注意点
メリットの多いiDeCoですが、開始したら原則60歳までは資金の引き出しは不可であることには注意が必要です。掛金を支払う場合には月5,000円が下限です。
掛金拠出は停止することも出来ます。但し、掛金を拠出しないと最大のメリットである所得控除が受けられなくなり、手数料(年間最低でも数千円)が掛かってくるため、残高が手数料分目減りするのみとなり、制度利用のメリットが薄くなります。
■iDeCoの運用管理機関の選び方
iDeCOを開始するには、運用管理機関である金融機関での口座開設が必要です。運用管理機関を選ぶ際には各種手数料、商品ラインアップを意識する必要があります。
- 手数料
まず、手数料についてですが、一時費用と月ごとに発生する費用があります。
加入時、もしくは企業型確定拠出年金からの資金移管時には一時費用の手数料が発生します。
支払先 |
手数料(税込) |
国民年金連合会 |
2,829円 |
また、毎月発生する費用としては以下があります。
加入者の場合(掛金を拠出している場合)
支払先 |
手数料(税込) |
国民年金連合会 |
105円 |
運用管理手数料 |
運用管理機関によって異なる |
信託銀行 |
66円 |
合計 |
171円~ |
運用指図者の場合(掛金を拠出していない場合)
支払先 |
手数料(税込) |
運用管理手数料 |
運用管理機関によって異なる |
信託銀行 |
66円 |
合計 |
66円~ |
初期の一時費用は一律2,829円で差異はありません。毎月発生する費用については、最低額は掛金拠出をしている場合には171円が、していない場合が66円が最低水準となります。各種手数料の面からは、月々の費用が最低水準の運用管理機関を選ぶべき、という結論になります。
- 商品ラインアップ及び商品のコスト(信託報酬)
また、商品ラインアップ及び商品の信託報酬水準も重要な要素となります。月間費用が最低水準の運用管理機関でも大手金融機関系の商品ラインアップは自社グループに偏っている場合が殆どで、且つ信託報酬(投資信託のコスト)水準がやや高めになっている場合もあります。
先進国株式のパッシブ(インデックス)商品の信託報酬を見て頂くと分かりやすいのですが、業界最安値の水準は0.10%程度になっています。先進国株式のパッシブ型商品の信託報酬が0.2%以上であったりする場合には他の商品も概ね高めの水準の信託報酬が設定されていると考えて良いでしょう。
■大手のネット証券であれば原則問題なし
手数料、商品ラインアップ、商品の信託報酬(手数料)水準の全てにおいて、大手のネット証券であれば、現状過不足ない状態となっています。
毎月かかるコストについては少額の差異に見えるかも知れませんが、原則長期に渡って運用を実施する制度ですので、毎月積立を実施するとして171円/月の際と、430円/月の際では30年間利用した場合には、93,240円の手数料差異が出る計算になります。また、信託報酬も長期運用においては小さな差異が最終リターンに少なくない差異をもたらすことになります。
■iDeCoの掛金は年1回払いも可能(元本確保商品のみにお金を置くのであればこちらが有利)
尚、iDeCoの掛金支払いですが、上限の範囲内で毎月等金額である必要はなく、年1回一括払いも可能です。年1回支払いの形ですと、171円かかる月が1か月で済みますので、手数料としては一番安上がりな方法となります。
但し、投資対象が定期預金等の元本確保商品でなく、株式等の価格が変動する商品に積立を実施している場合にはタイミング分散効果は限定的となります。定期預金等の元本確保商品のみに当面投資を実施する予定であれば、年一括払いを選択することで手数料が抑制出来ます。
■投資対象の選定(前提編)
iDeCoで何を投資対象とすべきかですが、前提として「複利」「コスト」「価格変動の大きさ」の3点についてご説明します。
利息を元本に組み入れ、(利息を組み入れた)元本に対して利息が計算される方法です。100円に対して3円の利息(利回り3%)で10年間投資した際の元本に利息を組み入れない場合(単利)と組み入れる場合(複利)の投資効果の差異は以下となります。
(円) |
開始時点 |
1年後 |
2年後 |
3年後 |
4年後 |
5年後 |
6年後 |
7年後 |
8年後 |
9年後 |
10年後 |
単利 |
100 |
103 |
106 |
109 |
112 |
115 |
118 |
121 |
124 |
127 |
130 |
100 |
103 |
106.09 |
109.27 |
112.55 |
115.93 |
119.41 |
122.99 |
126.68 |
130.48 |
134.39 |
年間利息3%で10年間投資した際の(元本部分に変化なしの前提)単利と複利のリターンの差異は4.39%でしたが、これを利回り4%、20年間とすると当初100の元本は20年後に単利で180、複利で219.11となり、リターン差異は39.11%まで広がります。
非常に大事な点ですが、「利回りが高ければ高いほど」、及び「投資期間が長ければ長い程」最終リターンが高くなり、単利と複利の差異は大きくなることになります。
- コスト
複利の、「利回りが高いほど」、及び「投資期間が長い程」最終リターンが高くなる特徴から、年間利回りに影響を及ぼす「コスト」は低い程最終リターンは高くなり、期間が長いほどその影響は大きくなります。
iDecoにおける商品のコストは主に「信託報酬」になります。
年率リターン3%、投資期間20年の場合に、年間コストが0.2%の場合と0.4%の場合の最終リターンの差異は以下となります。
信託報酬(コスト)年率0.2%の場合→最終リターン73.7%
信託報酬(コスト)年率0.4%の場合→最終リターン67.1%
コストが「複利」の年間リターンを低下させるため、投資期間が長い程、コストの最終リターンに及ぼすマイナス影響は大きくなります。上記のケースの場合、期間を30年の伸ばすと以下となります。
信託報酬(コスト)年率0.2%の場合→最終リターン129.0%
信託報酬(コスト)年率0.4%の場合→最終リターン116.0%
iDeCoの投資対象を議論する際に、誰しも信託報酬の議論をするのは、上記の通り信託報酬を意識することで確実にリターンを改善する効果があるからです。
- 価格変動の大きさ
投資対象の価格がどの程度変動するかも重要な観点です。ファイナンスの用語では「リスク」と言いますが、一般的には株は債券より値動きが大きく(価格が上昇する際も下落する際も幅が大きい)なります。
価格変動の大きい資産(株より債券)の方がリターンが高くなる傾向があります。株やREITの価格変動の大きいリスク性資産は債券に比べて高いリターンが期待できる一方、価格が下落する際の下落幅も大きくなります。
■投資対象の選定(実践編)-投資対象は海外株式インデックスが基本
iDeCoの投資対象についてですが、以下の観点から海外株式インデックス商品(為替ヘッジなし)を主な対象とすることをお勧めします。
- インデックス商品はコストが安い
まず、インデックス商品をお勧めする理由はシンプルにコストが安いからです。アクティブ運用(インデックスを上回る運用成績を目指す商品)はインデックス商品に比較してコスト高になります。当然コストを賄う以上の運用パフォーマンスが出せれば良いのですが、一般的にはアクティブ運用商品の8割はインデックスに劣後するパフォーマンスに留まると言われています。
- アクティブ運用商品がインデックスを上回るパフォーマンスをするかは予測不能
また、残念ながらどのアクティブ運用商品が今後インデックスを上回るパフォーマンスを出すかを予測することは出来ません。確実にリターン改善要因となるコストの低いインデックス商品に投資することが最も現実的な方法となります。
- 外貨投資は円安の際の購買力低下をヘッジ
海外資産に為替ヘッジなしで投資すると言うことは、投資時点で日本円を投資対象国通貨(USDの場合が多いです)に変換し、円安になれば、資産が増加、円高になれば資産が減少することを意味します。
大事な点はiDeCoを利用している方の多くが、収入の大半は日本円で長期で入ってくる点です。長期に円高であれば、外国製品の購買力という点では有利に働きます。一方、円安の場合には日本円の価値が低下し実質的な購買力の低下が懸念されます。この日本円の価値の低下のヘッジ手段として、外貨建て資産に投資することの意義は大きいと言えます。
- 株式投資はインフレへのヘッジ(他にも推奨理由あり)
株式への投資をお勧めするのは、①インフレ対策になるから、②足元の債券の期待リターンが低下しているから、③価格変動の大きい資産を非課税口座で所有することが合理的だから になります。
・インフレ対策
老後資金対策においてインフレは大きな敵です。保有している現金の価値が下がっていくことをヘッジするにはインフレに弱い債券や現金ではなく、株式に投資することに意義があります
・国債の期待リターン低下
世界各国で金利水準が低下し、国債10年金利でも日本や欧州でゼロ近辺もしくはマイナス金利となっている現状では、特に国内外の国債に投資することによる期待リターンは極めて低くなってしまっています。
この状況下で敢えて、信託報酬を支払って、債券に投資する意味は薄いと考えます。
・運用益非課税口座では価格変動の大きい資産に投資することが合理的
運用益非課税のメリットを最大限生かすためにも、価変動性の大きい株式非課税口座の中で持つことが合理的です。期待リターンの低い商品を運用益非課税口座で投資しても非課税のメリットは小さくしか享受出来ません。
■海外株式インデックスの中で何を選ぶかはお好みで
海外株式インデックス商品の投資対象は主に①米国株式(SP500指数等)②世界株式(MSCI ACWI指数等)③世界株式除く日本(MSCI KOKUSAI指数等)になります。
足元では米国株式のパフォーマンスが良好でしたが、今後どの指数がパフォーマンスが良いかは事前には予測できませんので、どれを選ばれても問題はないと考えています。
■国内株式インデックスや海外リートインデックスも有効な選択肢
国内株式のインデックスや海外リートのインデックスも有効な選択肢となります。投資対象として推奨する理由は海外株式と同様です。
国内株式については、外貨投資ではありませんので円安の際の購買力低下をヘッジという形にはならないのが海外株式インデックスとの差異になります。過去10年程度のトレンドでは円安の際には国内株式は上昇し、円高の際には下落しているので海外株式と類似の投資効果が得られているため、特に国内株式インデックスを投資対象としても問題はないと考えてます
海外リートインデックスについては海外株式インデックスとの差異は最終的な投資対象が不動産となるか、上場企業となるかになります。海外リートは「賃料」という予測しやすい収入が期待できる一方、信託報酬は海外リートインデックスに比較して高めという差異があります。全て海外リートに投資というのは極端かも知れませんが、投資して問題ない対象と考えています。
■投資手法① 「積立投資」は全ての局面で有効ではなく、必要に応じてブレーキを
- iDeCoでは「積立投資」が基本
iDeCoにおいては制度上、証券会社の通常の口座のように市場動向を見て、機動的に売買することが可能にはなっておらず、定期的に商品を積み立てていくことが原則的な投資手法となっています。
- 積立投資は「買い」の価格及びタイミングを分散する方法
積立投資は投資商品の購入のタイミングを分散する方法であり、定額の積立投資であれば、「価格が高い際には少ない口数、低い際には多い口数を購入」(いわゆるドルコスト平均法)することにより、「購入タイミング、価格の分散」という意味では、一定の効果が期待できます。
- 積立投資だから安全という訳ではない
一方「積立投資だから安全」という訳ではありません。投資対象の値上がりが持続する市場環境で積立を実施しても購入平均単価は上昇する一方です。逆に値下がりが持続する市場環境であれば、平均単価が徐々に下がってゆくので積立投資には有効な局面となります。
- 必要に応じて元本確保商品へのスイッチ、積立額の減額を
iDeCoでは元本確保商品へ資金を置くことが出来ますので、必要に応じて期待リターンは高いものの、価格下落リスクも大きい海外株式インデックスへ投資額を減額し、既存リスク性商品の元本確保商品への資金移動を行うことが最終リターンの向上には必要となってきます。
・海外株式インデックスの上昇余地が大きいと考える場合
→既存の資金+新規積立資金を全て海外株式インデックスに投資
・海外株式インデックスの上昇余地が少ないと考える場合
→既存資金の元本確保商品への一部スイッチ、新規積立資金の投資減額
・海外株式インデックスの上昇余地がないと考える場合
→既存投資を全て元本確保商品に振り替え、新規積立の停止
再度、海外株式インデックスに上昇余地があると考えた際には徐々に既存資金、新規積立共に投資比率を上げて行けばよい形になります。
- 上記の方法は難しいと考える方はバランス型ファンドへの投資を検討
何も考えずにひたすら定額の積立をしていれば良いという考えもありますが、価格変動の大きい海外株式でこれを実施することは下落リスクが大きいので、上記の方法を提案させて頂いて要ります。
一方、どのタイミングで海外株式インデックスの投資額を増減させていいか分からない、とにかく手間をかけたくないと、という方は後述のバランス型ファンドの積立を検討ください。
■投資手法② 投資は出口も意識を
・投資では「出口=売却」も重要
投資である限り、何時かは現金化をする必要があります。iDeCoでは投資期間が長期に渡りますが、今から意識する必要があるのは投資期限(原則60歳)が近くなってきたらタイミングを見て現金化を進めることです。
・運用終了時期の5年前位からは利益確定の意識を
運用状況にもよりますので一概にこのタイミングで利益確定を実施すべしというのは言えませんが、①運用終了の時期から5年前くらいからは利益確定を意識することが必要となります。具体的には元本確保商品である定期預金へのスイッチングの実施になります。
・利益確定は「買い」同様タイミング分散を
利益確定の際もタイミングの分散を意識する必要があります。購入の時と逆で、投資対象の値上がりが持続する際にはタイミングの分散は有効な利益確定手法となりますが、逆に値下がりが持続する際には全く機能しません。タイミング分散を意識しつつも、資産金額が目標に近い状態であれば、粛々と現金化をして行くことも重要になります。
■投資対象はバランス型ファンドも選択肢
上記で紹介している「海外株式インデックス商品に基本投資し、必要に応じて投資額や積立額を増減させる、というやり方は難しい、とりあえずほったらかしにしたいという方は「バランス型ファンド」への投資が選択肢となります。
- 「バランス型ファンド」とは?
国内外の株式・債券にに幅広く分散投資を行うファンドです。商品によって投資対象は異なりますが、国内株式、国内債券、海外株式(先進国)、海外債券(先進国)、海外株式(新興国)、海外債券(新興国)、国内リート、海外リートの8資産のいずれかを投資対象にするものが多いです。
- 「バランス型ファンド」のメリットは?
国際分散投資を商品が実施してくれること、複数資産に分散投資するため単一資産に投資するよりも価格変動が一般的には抑えられること、リバランス(資産配分比率の調整)が自動で行われること等があります。
- 「バランス型ファンド」の価格変動は?
商品によって異なりますが、組み入れ資産の価格変動についてはそれぞれ以下をイメージしてください。
・価格変動大 国内株式、海外株式(先進国)、海外株式(新興国)、国内リート、海外リート
・価格変動中 海外債券(新興国)
・価格変動中~小 海外債券
・価格変動小 国内債券
上記をベースにどの程度の価格変動が予想されるかを理解することが重要です。上記の8資産に均等配分するファンドは株式とリートで6割以上の比率であり、海外債券(新興国)も価格変動はそれなりにありますので、全体としては価格が変動しやすい商品となります。
- 「バランス型ファンド」の注意点は?
・価格変動がどの程度かは理解した上で投資を
前述の通り、バランス型ファンドに投資する際に重要なのは商品が結果としてどの程度のリスクを取っているか(価格の変動がどの程度潜在的に大きいか)を理解することです。リターンを積極的に取りにいくなら株式、リート比率の高いものを、損失を抑えることを重視するなら債券比率の高めの商品が選択肢になります。
・信託報酬にも留意
バランス型ファンドのコスト(信託報酬)は近年低下の傾向がみられるものの、株式・債券のインデックスの単純な50:50の配分で信託報酬が0.5%を超えるような商品も散見されます。0.2%を切る商品が望ましいですが、最低でも0.3%以下の信託報酬の商品を選ぶようにしましょう。
・信託報酬が安いが価格変動の大きい商品の投資比率を抑える、という方法も
国内株式、国内債券、海外株式(先進国)、海外債券(先進国)、海外株式(新興国)、海外債券(新興国)、国内リート、海外リートのの8資産に均等投資し、信託報酬は年率税込0.154%と低い水準にあるeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)という商品があります。
信託報酬水準はバランス型ファンドの中でも低く、長期投資には適した商品ですが、一方株式・リートへの配分は6割を超え、新興国債券にも投資するため価格変動が大きめになることが想定されます。価格変動を避けたい場合には、投資額のうち一定割合を定期預金に振り向けるという方法もあります。
・債券比率の高い商品は回避を
バランス型ファンドに投資する際に損失を抑えることを重視するなら債券比率の高めの商品が選択肢になると申し上げましたが、債券投資比率、特に国内債券投資比率の高い商品は現状ではお勧めできません。利回りが相当低くなっており敢えてコスト(信託報酬)を払ってまで投資するべき対象とは考えにくいからです。
・ターゲットイヤー型ファンドは回避を
「バランス型ファンド」の一種として特定の将来の年、例えば2030年をターゲットとして残り年数が長い期間には株式投資比率を高くし、残り年数が短くなってくると債券の投資比率を高くするといった「ターゲットイヤー型ファンド」と言われるものがあります。
ターゲットの年に向けて徐々に価格変動を抑えて行くという発想は悪くありませんが、資産配分が事前に確定しているため相場の変動に対応できない(株式比率が高い時期に株式市場が下落し、債券比率が高い時期に金利が上昇することも考えられる)ことと、コスト(信託報酬)が高い商品も多いため敢えて投資する商品ではないと申し上げておきます。
■企業型確定拠出年金に加入している場合
・企業型確定拠出年金(企業型DC)を稼働させない理由はない
資産運用を開始するのであれば、まずはiDeCoからと書きましたが、より正確に言うと勤務先で企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入しているのであれば、企業型DCの資金も稼働させない理由はありません。
企業型DCについては、加入されている場合でも、何かしらの形で説明を受けたことはあるものの、実際には運用はしておらず、結果定期預金等に資金が滞留しているケースが多いのではないでしょうか。
- iDeCoとの差異
iDeCoとの差異は掛金が勤務先の企業の拠出となっている点です。運用益が非課税である点、受取の際の税金についてはiDeCoとの差異はありません。加入者である社員は掛金を支払ってませんので、掛金の所得控除のメリットはありません。また、企業型DCの商品ラインアップはiDeCoと類似していますが、商品の信託報酬(手数料)に関しては全般的にiDeCoよりやや高めの印象です。
企業年金連合会の調査「確定拠出年金実態調査結果 2018年度調査」によると、加入者掛金の月額の平均は7,806円だそうですので、年間10万円弱の掛金が平均的ということになります。
運用益非課税、受取の際の税制もiDeCoとは違いはありませんので、iDeCo同様海外株式インデックスが投資対象の第一候補となります。常に全額で海外株式に投資する必要がないことは、iDeCoの場合と同様です。
■管理人はどうしてるの?
iDeCoの口座はマネックス証券で開設しています。加えて、勤務先が企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入しています。2つ併せて月2万円程度の掛金です。
今の市場の情勢で国内外の株式や債券への投資でリターンを期待できる状況ではないとの判断からiDecoも企業型確定拠出年金(企業型DC)も運用は一切せず定期預金に資金を置いています。