「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」 

家計改善の「実践的」且つ「正攻法」の方法を紹介して行きます。

固定費削減具体編⑥ 医療保険

■取り組む内容:医療保険がん保険等含む)の解約、もしくは県民共済への契約移行

■1年間の費用削減期待額:1人当たり20,000円~

■取り組み優先度:★★★★★(★5つが最高)

■ポイント:医療保険は貯蓄があれば加入は原則不要、入りたければ県民共済

 

入院費用や手術費用の支払い受けられる医療保険ですが、必要かどうかは精査が必要です。

 

医療保険支払い額の平均ってどれくらい?

残念ながら、医療保険のみで世帯平均でどの程度の支払いがされているかの目安となるような調査は見つかりませんでした。各生命保険会社のラインアップを見る限り1人あたり月3,000円~5,000円程度の支払いが平均的と考えられます。

 

■固定費削減のポテンシャルは?

上記を前提とすると、仮に1か月4,000円の医療保険に加入していた場合、その医療保険を不要と判断できれば年間48,000円の固定費削減が可能で、夫婦2人であれば、その倍の96,000円です。

 

医療保険を後述の県民共済に移行した場合には、月額2,000円程度の費用削減となり、年24,000円程度、夫婦2人であればその倍の48,000円の削減効果となります。

 

医療保険って何?

医療保険は怪我や病気に備える保険であり、原則一定以上の入院に対して給付される「入院給付金」と所定の手術を実施した際に給付される「手術給付金」が保障の中心となります。

 

■入院給付金って何?

入院給付金は原則入院1日あたりの給付金額設定をして、入院日数に応じて給付金支払い額が確定します。入院1日当たり5,000円で5日間入院した場合、25,000円が支払われるといった形です。また、入院した初日から無条件で支払われる訳ではなく個別保険契約に基づいて支払いがなされます。

 

■手術給付金って何?

手術給付金は「実際の手術にかかった費用」ではなく「入院給付金の日額に一定の倍率をかけた額」を給付するのが一般的です。入院1日当たり5,000円の給付金の契約で、ある手術をした場合その20倍の金額を給付すると決まっているので、10万円の給付がされるといった形です。

 

■入院給付金や手術給付金以外が給付される保険も

入院給付金や手術給付金に加えて、死亡保険金や高度障害保険金等を給付される保険もあります。

 

■特約追加も可能

主契約に加え先進医療特約、がん特約、女性疾病特約といった特約の追加も可能です。特約のみを契約することは出来ませんが、がん保険のように特約自体が保険の主契約となっている商品もあります。

 

医療保険は必要か① - 健康保険加入であれば自己負担割合は最大3割

国民健康保険等の公的医療保険(日本は国民皆保険です)の保険料を支払っていれば医療費は最も高い場合でも自己負担は3割で、70歳以上は1割とそもそも入院や手術費用を含めた医療費をそもそも全額は負担する仕組みにはなっていません。

 

医療保険は必要か② - 高額療養費制度で「自己負担額には上限あり

また、「高額療養費制度」という医療費負担を一定の水準に留める制度があります。入院や手術費用を含めた医療費は全額負担とはなっていませんが、そもそもの医療費が高額な場合、自己負担額が大きくなり個々人の負担限度を超えることを防ぐための制度です。

 

自己負担限度額は年齢や所得によって異なるものの、70歳未満で、年収が500万円であれば仮に総医療費が100万円であっても、3割負担の30万円ではなく、87,430円が負担の上限となります。

 

但し、入院にかかる費用は全て適応される訳ではありません。差額ベット(大部屋ではなく個室を選んだケース)代や入院時の食事代の一部負担等は対象外となります。

 

医療保険は必要か③ - 医療費控除で費用の一部は返ってくる

世帯の年間の医療費の10万円を超えた部分については確定申告を行うことにより、10万円を超える医療費については所得控除(課税される金額より引くこと)が出来ます。医療費の全てに適応可能な訳でありませんが、入院時の部屋代や食事代、交通費等も費用として計算可能です。

 

例えばですが、年間の世帯の医療費が50万円だった場合には40万円を課税されるその年の所得から引くことが出来ます。所得が500万円の場合、所得税20%、住民税10%で合計30%の税率となりますので、40万*30%=12万円の還付を受けることが出来ます。

 

(保険金の支払いを受けた場合はその分控除可能額は減少、ここでは保険金は出なかったと仮定)

 

医療保険は必要か④ - 入院時の費用平均と保険料の比較

入院時の費用のデータとしては、公益財団法人 生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査/直近の入院時の自己負担費用と逸失収入の総額」のデータがあります。

 

 

こちらの調査によると、入院の際自己負担費用と逸失収入(失われた収入)の合計は平均で28.4万円となっています。

 

28.4万円を入院時の自己負担及び逸失収入の平均値として考えると、月額4,000円の医療保険費を払っていたとした場合6年程度の保険料に相当する金額です。

 

6年分の保険料で入院時の自己負担費用と逸失収入が賄えるとするなら敢えて保険に加入せずにその分を貯金で賄うことが合理的との考え方が出来ます。

 

医療保険は必要か⑤ - 先進医療を受けることは稀

先進医療とは、厚生労働省が認める先進的医療で、保険診療の対象として適正かを評価中の医療技術であり、費用負担は全額自己負担となり、高額療養費制度も適応できません。このため、先進医療を受けた際には高額な医療費支払いに対応するため、医療保険は必要との議論もあります。

 

但し、先進医療に指定されている治療法や医療技術は多くはなく、実施可能な医療機関も限られています。また、「患者が希望し、医師がその必要性と合理性を認めた場合に行われる」治療になります。

 

平成28年7月1日~平成29年6月30日で実施された国内の先進医療の総患者数は32,984人、総人口の0.03%弱の人数に過ぎません。

 

また、上記人数から「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」と「前眼部三次元画像解析」の眼科関連先進医療を除いた患者数は5,865人となります。実際にお世話になる可能性はかなり低いです。

 

医療保険が必要と考えられる場合

上記の「医療保険は必要か」の①~⑤の内容を踏まえると、医療保険は貯蓄がなく、入院した際に支払いに窮する状況(若年層で貯蓄額が少ない場合等)であれば必要な場合もあると言えます。

 

一方、ある程度の貯蓄がある場合には医療保険には加入せず、保険料相当分を貯蓄するというのも有力な選択肢となります。

 

貯蓄があっても高額療養費制度の枠外となる差額ベット代や食事代、もしくは先進医療の費用への備えがしたい、という場合は加入も選択肢となりますが、その場合は後述の県民共済加入をお勧めします。

 

医療保険が必要な場合には、県民共済がお勧め

医療保険は必要と判断された場合には県民共済をお勧めいたします。

 

保険会社が営利団体であるのに対して、共済は非営利団体となります。県民共済は全ての都道府県にある訳ではなく、原則居住、もしくは勤務している地域の県民共済のみ加入可能です。

 

県民共済の保障内容はシンプル、掛金は年齢に関わらず原則一定

県民共済の保障内容は医療保障+死亡保障がベースとなっており、シンプルな構成です。

 

また、年齢や性別に関わらず掛金が一定なことも特徴です。民間保険だと、年齢が上がるほど保険料は上がる傾向にありますので、特に年齢が高めの方には割安感があります。(満65歳以上は保障内容が変化します)

 

県民共済はコストパフォーマンスが高い

お勧めする理由はコストパフォーマンスです。非営利組織であるため掛金(保険料)はリーズナブルな金額となっています。また、剰余金が生じた場合には割戻金という形で加入者に還元する制度があり実際の負担額は通常掛金より少ない額となっています。

 

県民共済の商品内容の例

都民共済では満18歳~満64歳向けの入院保障商品で掛金2,000円/月で、18歳~60歳の場合以下の保障となっています。

 

・入院1日目から10,000円/日の給付金、

・手術に応じて2.5万円、5万円、10万円の給付金、

・先進医療に関して最高150万までカバー

 

新三大疾病特約を1,200円/月で追加で18歳~60歳で該当疾患で入院の場合以下の保障となります。

 

・がん、心筋こうそく、脳卒中による入院で入院1日目から10,000円/日の給付金、

・がんと診断された場合には50万円支給

・がん、心筋こうそく、脳卒中による手術は5万円・10万円・20万円の給付金

・先進医療に関しては入院保障をを超えた分は最高150万円カバー

 

2018年分の割戻率は36.64%となっていますので入院保障のみなら月1,270円程度の負担、新三大疾病特約を1,200円/月で追加しても実質月2,000円程度の負担で済んでしまいます(加えて、生命保険料控除も利用可能)。

 

県民共済の保障内容の特徴

県民共済では年齢が上がってゆくと以下のように、保障内容が減少してゆきます。

 

  • 60歳以降保障額が段階的に減少
  • 65歳以降は保障額が減少
  • 85歳で保障が終了

 

65歳以降の保障額の減少や85歳で保障が終了してしまう点については不安を覚えるかも知れませんが、総務省の2019年家計調査によると、1か月の医療費の世帯当たり平均は60歳以降では1.5万円~2万円の間に収まっています。

 

健康保険加入者の医療費の負担割合が現状70歳以降は1割であることや、前述の高額療養費制度もあるため家計を圧迫するような形で医療費負担は平均的には生じていないと言えます。

 

医療費の負担割合は今後上昇する可能性もありますが、現状を踏まえると65歳以降の医療費のカバーの目的で、保険料の高い医療保険に若年期から加入し続ける必要まではないのではないでしょうか。

 

■管理人はどうしてるの?

働き始めてから長らく、某外資系生命保険会社のがん保険入院保険、他疾病の保障含む)に加入していました。月2,000円程度の掛金で入院1日目から15,000円保障のなかなか好条件の保険だったのですが、保障内容が古くなってきたこともあり解約しました。解約した際に払い込んだ保険料の全額弱は解約払戻金で取り戻すことが出来ました。

 

解約後、医療保険に加入しないことも検討したのですが、最低限の保障はあった方が良いと判断し、都民共済の上記で例として紹介した入院保障+新三大疾病特約に加入しています。