「収入が増えなくても可処分所得を増やす方法」 

家計改善の「実践的」且つ「正攻法」の方法を紹介して行きます。

固定費削減具体編⑤ 生命保険

■取り組む内容:生命保険契約の見直し(シンプルな掛け捨てタイプの保険への移行)

■1年間の費用削減期待額:1人当たり50,000円程度~(現在の契約による)

■取り組み優先度:★★★★★(★5つが最高)

■ポイント:生命保険は掛け捨て保険に原則加入、貯蓄や運用は別の手段で

 

死亡や障害等に備えるためのセーフティネットとして生命保険が重要な役割を果たしていることは改めて申し上げるまでもありません。一方、生命保険の内容は複雑な点も少なくなく、なんとなく入っているケースも少なからずあると考えられ、費用削減ポテンシャルの非常に大きい分野と言えます。

 

■生命保険料の支払いの平均ってどれくらい?

平成30年度の「生命保険に関する全国実態調査」によりますと、世帯加入件数の平均は3.9件、生命保険加入世帯における世帯年間払込保険料は38.2万円、世帯年間払込保険料の世帯年収に占める割合は7.2%となっています。

 

月間3.2万円程度の保険料支払いがあり、世帯年収に対して7%程度の割合となっている(=可処分所得に対してはもっと割合が高い)ということになります。

 

この数値は医療保険も含んだ数値ですので、純粋な生命保険については世帯当たり年間30万円前後(1人当たり4,000円/月、夫婦2人とも加入を前提)と推定されます。

 

家族構成や現在契約している生命保険の契約にもよりますので、一概には言えませんが下記にご説明する契約の合理化により固定費削減の中でも相当インパクトの大きい結果が期待出来ます。

 

■生命保険(死亡保険)ってどんな種類があるの?

生命保険(死亡保険)は定期保険と終身保険に主に分類されます。

 

■定期保険って?

被保険者(保険の対象者)が亡くなったもしくは所定の高度障害状態になった場合に、保険金が支払われる。保険期間は一定で、原則保険料は掛け捨て。保険終了時及び途中解約の際の受取可能な金額はない、もしくは僅か。保障及び保険料支払いは一定の期間。

 

終身保険って?

被保険者(保険の対象者)が亡くなったもしくは所定の高度障害状態になった場合に、保険金が支払われる。定期保険との違いは被保険者の一生涯保障が継続する点。保険終了時や保険終了時には払い戻しがある。保険料の払込期間は生涯に渡って払い込む方式も、一定の期間まで一生分払い込む方式もある。

 

養老保険って?

被保険者(保険の対象者)が亡くなったもしくは所定の高度障害状態になった場合に保険金が支払われることに加えて、満期まで生存した場合には保険金と同額の満期給付金が受け取れる。定期保険と終身保険の両方の機能を持つ保険と言えます。

 

■定期保険と終身保険の比較

 

定期保険

終身保険

保険期間

一定の期間

一生涯

保険料

終身保険より安い

定期保険より高い

解約返戻金

(解約の際に貰える金額)

原則なし

あり

メリット

・保険料が終身保険より安い

・保険期間が選択可能で見直しがしやすい

・保障切れがない

・保険料は契約時から変わらない

デメリット

・一定期間で保障が終了するため、保障切れ及び更新の場合には料率上昇のリスク

・保険料が定期保険より高い

 

■生命保険料を決める3つの要素

生命保険料は「予定死亡率」「予定利率」「予定事業費率」の3つの要素から決まります。

 

  • 予定死亡率

契約期間中に死亡する人がどの程度かを予測した割合。性別、年齢別に想定される死亡率。死亡率が高いほど保険料は高くなり、低いほど保険料は安くなる。

 

  • 予定利率

生命保険料の大部分は将来支払う死亡保険金や給付に備え、責任準備金として積み立てられるが、その運用に関わる想定利回り。予定利率が高い程保険料は安くなり、低い程高くなる。

 

  • 予定事業費率

生命保険会社の事業の維持・運営を行うために想定される必要経費の割合。予定事業比率が高い程保険料は高くなり、低ければ保険料は安くなる。

 

■生命保険は高コストの制度、敢えて保険以外の機能を求める必要はない

生命保険に「保険」以外の貯蓄等の機能を求めるべきかについて、生命保険料を決める3つの要素それぞれから考えてみます。

 

  • 予定死亡率 - 死亡率の想定は「貯蓄」や「運用」部分については原則無関係

予定死亡率に関しては、保険会社が死亡率に関して、保険料を決定する基準となる「標準生命表」が2018年4月に改定されており、長寿化(各年代における死亡率の低下)を反映して定期保険に関しては死亡保険料の引き下げを保険会社各社が行っています。

 

この「予定死亡率」の変更によって生命保険の純粋な「保険」部分の価格が引き下げられたという話であり、終身保険の「貯蓄」や変額年金保険の「運用」部分については原則関係ない話です。

 

  • 予定利率 - 足元の運用の期待リターンは大幅に低下

予定利率については、将来の保険金給付や終身保険の解約払戻金、養老保険の満期保険金の支払い等に向けて保険会社が運用を実施する際の利回りとなります。

 

金融庁提示の運用利回りである「標準利率」(この数値をベースに各保険会社が予定利率を決定)は1980年代には5-6%あったものの、年々低下し、2013年には1%、2017年には0.25%となっています。

 

長期運用において、期待リターンの低下は大きな最終リターンの差を生みます。年間のリターンは0.25%で運用しても35年後には7.8%のリターンしか出ませんし、生命保険商品のコストがかかりますので、実際には契約者はもっと低いリターンしか受け取れません。

 

予定利率が低下している足元では、終身保険で長期間資金を預けることによる運用のリターンには期待できません。敢えて生命保険で長期間資金を固定することに意味は薄くなります。一方、予定利率の低下は解約払戻金のほぼない定期保険への影響は少なくなります。

 

  • 予定事業費率 - 生命保険会社のコスト比率は高い

予定事業比率はいわゆる「コスト比率」となります。国内生命保険会社はこの予定事業比率の公開に積極的ではなく公開しているのはライフネット生命のみのようです。

 

ライフネット生命の場合30歳男性の定期保険で保険期間10年、保険金額1,000万円の場合、保険料に占める割合は2019年12月現在で、37.5%程度です。オンライン販売が主力の会社で4割弱がコストになっており、大手生命保険会社の予定事業比率も相応に高いことが推察されます。

 

言い方を変えると、生命保険は契約者にとって「ブラックボックス」の高いコストが支払われて運営されている商品です。保険会社にしか提供出来ない機能以外を敢えて保険商品に委託する必要はコスト効率性の観点からはないのではないでしょうか。

 

■生命保険は税制上特に有利な訳ではない

税金の観点からも特に生命保険が有利という結論にはなりません。

 

  • 支払い額の控除が認められるのは生命保険だけではない

生命保険料は「生命保険料控除」で節税は可能です。一方、年間の控除上限値が定められていますが、資産運用であれば、iDeCoを使用すれば掛金は全額税額控除になり生命保険だけの制度ではありません。

 

  • 死亡保険金の非課税枠がなくても相続税の控除枠がまず利用可能

死亡保険金については、「500万円×法定相続人数」の金額が非課税と言う点を、生命保険の利点と言う方もいますが、そもそもの相続税の控除枠も最低4,200万円はあります(課税される資産の額が4,200万円以下であれば相続税支払い不要)。生命保険の相続の控除枠を利用しなければいけない程の資産を持った方もそこまでは多くないのではないでしょうか。

 

非課税枠については、定期保険、終身保険に関わらず死亡保険金についての制度で、終身保険が定期保険に比較して、税制上有利という話にもなりません。

 

  • 解約払戻金は課税される場合も

契約者と保険金受取人の関係によって適応される税制は異なりますが、払い込んだ保険の総額を終身保険等の解約返戻金が上回った場合には税金が発生する場合があります。

 

・保険料負担者=解約返戻金受取人→所得税

一時所得扱いで50万円の特別控除があり、控除後の所得金額の半分が他の所得と合算されて総合課税になります。課税されるケースは少ないと考えられますがその程度のリターンしか生まない商品に長期間資金を拠出していることの裏返しに過ぎません。

 

保険料負担者≠解約返戻金受取人→贈与税

贈与扱いとなり、解約返戻金全てが課税対象になります。贈与税には110万円の基礎控除はありますが超過分は課税対象となります。税制上有利とは全く言えません。

 

■結論①「終身保険の解約払戻金があるから保険料が掛け捨てにはならない」は誤解

終身保険について、解約払戻金があるから保険料が掛け捨てにはならない、というの誤解です。保険会社の諸々の費用を賄った上で現状の予定利率から数十年後に保険会社が払い戻し可能な金額が解約払戻金として設定されているに過ぎません。

 

■結論②生命保険(死亡保険)はシンプルな掛け捨てタイプの定期保険で

以上から死亡保険はシンプルに掛け捨て型の純粋な保険機能を提供する定期保険を中心に検討すべきという結論になります。コストがブラックボックス化(相応に高いことが想定される)生命保険に貯蓄や運用の機能を敢えて任せる必要はありません。

 

■結論③「餅は餅屋」で、生命保険に全てを任せる必要はない

生命保険には保険のみの機能を求め、他の機能は専門の機関に求めることが合理的です。

貯蓄 → 銀行預金

運用 → iDeCo口座等

為替 → 外貨預金

といった生命保険よりもコスト上、もしくは税制上有利な専門の機関で貯蓄、運用等は実施しましょう。

 

■結論④ 生命保険(死亡保険)の必要保障額は公的保障等を考慮して決定

生命保険の必要保障額を考える上では、以下の公的保障等を考慮の上での保障額及び期間に基づいた契約を検討するようにしましょう。公的保障等を考慮すれば、必要以上に大きな保障額での契約をする必要はなくなります。

 

団体信用生命保険(団信)に加入して住宅ローンに入っている場合、住宅ローンの返済中に万が一のことがあった場合、保険金により残りの住宅ローンが弁済されます。その後の必要資金に大きな差を生む要因です。

 

  • 遺族年金、遺族厚生年金

国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。

 

遺族年金には、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、亡くなられた方の年金の納付状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。

 

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。

 

障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。

 

  • 勤務先等の提供する保障

勤務先によっては死亡や障害となった際の独自の給付制度持っている場合がありますので、社員規約等で内容を確認しましょう。

 

■「収入保障保険」も有力な選択肢

収入保障保険とは、保険期間中に死亡もしくは高度障害となった場合所定の金額が毎月契約期間満了時まで支払われる形の掛け捨てタイプの生命保険です。

 

時間が経てば経つほど、受け取れる保険金の総額が減少するため(定期保険は所定の死亡保険金は保険期間中いつ亡くなったとしても支払い額は一緒)保険料は比較的安くなっています。

 

一般的に必要な保障額は年齢を重ねるごとに少なくなりますので、合理的な商品と言え生命保険に加入する際には有力な選択肢と言えます。

 

■生命保険の乗り換えの際には空白期間を作らないように

注意点としては、乗り換えを検討する際には解約を先行させず無保障期間を作らないことです。新規契約も必ず契約出来るとは限りませんし、一部の過去の契約している保険は条件の良いもの(予定利率が高い時代の商品、所謂お宝保険)もありますので、じっくり検討してから乗り換えをすることをお勧めします。

 

■管理人はどうしてるの?

掛け捨てタイプの「収入保障保険」に加入しています。保険期間は65歳までとしていて、保険料は月に1万円を下回る水準です。

 

後述の医療保険と合計しても月1万円強の支払いとなっており、平均的な生命保険料支払い額よりはかなり少ない金額と自負しています。